遠いフィリピンで書かれた一通の書簡を、本誌は入手した。書いたのは63歳の日本人。〈京都地検 佐川印刷担当検事様〉に宛てたA4用紙1枚の文面はこう始まる。
〈私は元佐川印刷の取締役湯浅敬二です。新聞記事、週刊誌を読んでいて余りにも事態が違うので怒りが込みあげてきて手紙を書く事にしました〉
90億円が“消える”という異次元の不正経理事件は新たな展開を迎えた。ジャーナリストの伊藤博敏氏がレポートする。
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佐川印刷は京都に本社を置き、その名の通り佐川急便の印刷物を一手に引き受け、連結売上高が1000億円を超える大手印刷会社である。湯浅氏は、彼が役員として財務・経理部門を担当していた子会社の資金約90億円を不正流用。そのうち4億円を騙し取った疑いが持たれている。
不正流用が発覚した昨年1月、事態を把握した同社は湯浅氏を刑事告訴したが、京都地検が捜査に着手した直後に本人は海外逃亡。1年8か月にもわたる逃亡生活を続けたが今年10月、フィリピン当局に拘束された。帰国後すぐに逮捕される予定だという。
帰国・逮捕を目前に控えた彼は、「その前に気持ちを伝えたい」とフィリピンで手紙をしたためた。その内容は驚くべきことに、湯浅氏の「単独犯行」だとするこれまでの報道を真っ向から否定する内容だったのである。