近年、優勝争いから遠ざかっていた早稲田大がトップに立ち、青学大を揺さぶるも大エース・一色恭志(4年)が逆転──例年以上のドラマがあった11月6日の全日本大学駅伝。その現場で「箱根の楽しみが増えた」と明かしたのは、駅伝情報満載のサイト・「EKIDEN NEWS」の“博士”こと西本武司氏だ。
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早大3区の鈴木洋平(4年)がトップに1秒差の2位で襷を受け、青学大を抜いて差を14秒まで広げると、「早稲田ワンチャンあるで!」とネット上はお祭り騒ぎになった。
鈴木の魅力は走りもさることながら「沿道を味方につける」という独特のスタイルにある。箱根と違い、出雲、全日本は区間によっては沿道の人出もまばら。特に鈴木が走った出雲4区、全日本3区は「つなぎ区間」と呼ばれる地味な区間だが、鈴木はそこを終始、笑顔で走り続け(一般的に長距離ランナーはポーカーフェイス)、沿道に手を振り、歓声を自ら求めた。
沿道の観客は、「なんか面白いヤツが来たぞ」と大盛り上がり。観客を味方につけて地味なつなぎ区間を「洋平ロード」に変えたのだ(出雲では区間新、全日本では区間2位)。沿道に手を振る鈴木を見た、解説の渡辺康幸・前早大監督は「相楽(豊)監督に後で怒られるはず」とツッコミを入れたが、このキャラは早大の新しい“武器”だ。
では、絶好調の人気者・鈴木を箱根でどこに配すか。つなぎ区間のスペシャリストの感もあるが、適性などを全く無視した期待として、山登りの箱根5区を笑顔で沿道に手を振り続けながら走る姿も見てみたい。「箱根の山に笑いの神が降臨!」と大盛り上がり―そんな妄想も膨らむ。本人は「早稲田の鈴木、神ってる」と呼ばれたいらしいからちょうどいいのではないか。
早大には全日本でメンバーを外れた井戸浩貴(4年)ら実力派ランナーが他にもいる。12月に30km走を繰り返す早大伝統の「集中練習」の成果が楽しみだ。
※週刊ポスト2016年11月25日号