酒と上手に付き合うために、量や飲み方、ツマミなどを工夫している人は多いだろう。だが、酒と健康にまつわる俗説は、実に間違いだらけなのだ。酒は飲み方次第で、人を「長寿」にも「短命」にもする──。
酒の飲み方については、これまで「良い」と思っていたことでも、最新の医学によって否定されているものもある。慶応大学看護医療学部教授の加藤眞三氏が言う。
「多くの人が信じている通説には、実は医学的根拠がないものも少なくありません。例えば、“牛乳を飲酒前に飲むと、乳脂肪が膜を作って胃粘膜を保護するため胃に負担をかけないし悪酔いもしない”という説は医学的に根拠がない。
水にも油にも溶けるアルコール分子は非常に小さいため、アルコールは難なく胃壁に到達するどころか、すり抜けて体内に浸透します」
ウイスキーや焼酎をロックで飲む人は、「ミネラルウォーターなどのチェイサーで水分補給すれば、体内のアルコール濃度は薄まる」と思い込んでいる人もいるだろう。これも根拠は薄いという。
「摂取したアルコールはすぐ血液に入り込み、体の隅々にまで浸透します。体内にアルコールが吸収された後に水をいくら飲んでも希釈効果はありません。
水をたくさん飲めば利尿作用によって、尿とともにアルコールを体外に排出できますが、尿に含まれるアルコールは数%に過ぎません。どれだけ排尿しても、体内のアルコール量はほとんど減らずむしろ血中濃度が高まってしまう」(同前)
アルコール度数の高い酒を薄めるには、最初から割って飲むしかない。その際にも注意が必要だ。一般的に体を温める飲み物は健康的だと考えられるが、アルコールと混ざると事情が異なる。
焼酎やウイスキーなどの度数が高いアルコールをお湯で割ると、アルコール分子が温まることで活動が活発化し、体内への吸収スピードが速まり、食道や胃に負担がかかりやすくなる。吸収スピードを抑え、体に負担をかけないためには水で割るのがいいという。
※週刊ポスト2016年11月25日号