ジャズシンガーとしてデビュー、女優、小説家としても活躍してきた真梨邑ケイ(59)が、1998年に出版された写真集『軽蔑』の思い出と近況を語った。
* * *
1982年のデビュー当時から、ジャズシンガーとグラビアなどビジュアル関係のお仕事の、両輪で歩んできました。
この写真集を撮影してくださった沢渡朔(はじめ)さんは、1970年代から女性誌などで活躍されていて、私がデビュー前から憧れていた写真家です。一度撮っていただきたいという想いをお伝えして実現しました。
企画段階から私も参加し、1960年代のヨーロッパ映画のようなゴージャス感、退廃的な雰囲気を出そう、とコンセプトを決めました。イメージしたのはフランスの女優、ブリジット・バルドー。写真集のタイトル『軽蔑』も、彼女の主演作品から取ったものです。
写真集やステージでの私のイメージとギャップを感じられるかもしれませんが、実は私はとてもシャイなんです。
この撮影の時も「誰も入れないで、沢渡さんと1対1にしてください」とお願いして、徹底してもらいました。沢渡さんも寡黙でシャイな方。「色っぽい顔をして」というような指示をまったく出されなくて、私も喋りかけないから、とっても静か(笑い)。大きな館で2人きり、静寂の中にシャッター音だけが響いていました。時間の感覚がなくなってしまうほど、濃密な撮影現場でしたね。