塩分の採りすぎは高血圧の主要因と考えられているが、そんな従来の“常識”を覆す学説も複数存在する。
例えば、1985年に米国のアルダーマンは約20万人の生活調査を行ない、イギリスの医学誌『ランセット』に発表。それによれば、調査対象となった1日の塩分摂取量が2~13gの人たちには、塩分と高血圧に相関関係はみられなかった。
むしろ、塩分摂取量が最も少ないグループは脳卒中や心筋梗塞になりやすく、最も摂取量が多いグループ(8.94~12.80g)の脳卒中・心筋梗塞の有病率が一番低いという結果となっている。
「減塩すれば血圧が下がる」という論が間違いなら、血圧を下げるにはどうすればいいのか。石原クリニック院長の石原結實・医師は、「何よりも、体をよく動かすことが重要だ」という。
「塩分の摂取量を気にするよりも、たくさん水分を摂取したうえで、尿や汗として塩分を排出するほうが血圧を下げやすい。それだけでなく、体を動かすと血管拡張物質のタウリンが分泌され、血圧を下げる効果があるといわれている」
肥満気味の人はダイエットも心がけなければならない。肥満が原因でインスリンが過剰に分泌されると、排泄するはずの塩分が腎臓で再吸収されてしまったり、血管を収縮させたりするなどして血圧が下がりにくくなる。
血圧を下げる食べ物を摂るのも有効だ。厚労省の「日本人の食事摂取基準」策定検討会のメンバーで、浜松医科大名誉教授の菱田明・医師が指摘する。
「バナナなど果実に含まれるカリウムは体内の余分な塩分を排出する働きがあるので血圧を下げる効果が期待できます」
減塩対策で控えがちなみそ汁は、「高血圧対策の切り札」として見直されつつある。共立女子大の上原誉志夫教授は2015年、「習慣的味噌汁摂取が血管年齢に与える影響」と題した研究結果を公表。2010~2014年の5年間に人間ドックを受診した男性330人の食習慣を聞き取り調査した結果、みそ汁の摂取が1日1~3杯なら血圧に悪影響を及ぼさないことがわかった。
「むしろみそ汁の具であるワカメに含まれるアルギン酸や、なめこに含まれるカリウムは血圧を下げる効果が期待されています」(管理栄養士の岡田明子氏)
※週刊ポスト2016年11月25日号