北方領土が返還された場合、何がどう変わるのか。漁業や観光、海上治安などの課題を検証する。
「『2島返還が現実的だ』『4島一括返還が前提だ』などの声があるが、私はどちらも違うと思う。帰属問題は交渉を継続するとして、近く、国後、色丹、歯舞の『3島の施政権』の返還が期待できるのではないか」
海洋問題研究家で、この11年で6度、北方領土を訪れた山田吉彦・東海大学教授はそう語る。山田氏による監修の下、「3島の施政権」が返還された場合の北方領土がどうなるかを検証した。
【択捉島(エトロフトウ)】面積3168平方キロメートル(沖縄本島の約2.6倍/人口約6000人
水産会社「ギドロストロイ」の企業城下町である択捉島を日ロ交流のための「経済特区」とし、経済分野を中心に日本との一体化を進めることになるか。国後島との間にある国後水道(エカテリーナ海峡)は水深約480メートルあり、ロシア潜水艦の航行路となっている。4島一括返還の場合、ロシア艦は国旗を掲揚しての浮上航行を求められるので、択捉島返還の可能性は低いとの見方が多い。
【国後島(クナシリトウ)】面積1490平方メートル(沖縄本島より大きい)/人口約7000人
ロシアによる開発は2011年に新ターミナルと新滑走路が完成したメンデエレフ空港や2012年に大型船が直接、接岸できる埠頭が完成した古釜布港など、公共工事による港湾、飛行場、道路舗装などにとどまっている。島の北半分は「自然保護区」で人の立ち入りが制限されてきた。手つかずの自然を活かし、世界自然遺産「知床」と合わせたエコツアーなどの展開が期待される。