人口減少・高齢化による日本経済の衰退を不安視する向きは多い。だが、立正大学教授の吉川洋氏は「労働力人口の減少と経済成長は無関係」と、社会に蔓延する悲観論を一蹴する。
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現在約1億2700万人の日本の人口は、ある試算では2110年に4286万人まで減少する。今後、社会保障、国家財政、地方過疎など様々なリスクが増大することになる。
しかし、「日本はこの先、人口が減るから経済は右肩下がりになる」という悲観は間違いだ。先進国において、労働力人口の増減と、1国で1年間に作られるモノやサービスの付加価値の総計を表すGDP(国内総生産)は無関係なのである。
実際、日本経済は高度成長期(1955~1970年)に年約10%成長したが、この間の労働力人口の伸びはわずか年1%ほどだった。それでは何が、差し引き9%の成長を支えたのか?
その答えは、「労働生産性の上昇」である。すなわち、1人あたりの労働者が作り出す付加価値が増えれば、経済は成長するのだ。
労働生産性の上昇をもたらすものこそ、広い意味での「イノベーション」(技術革新)に他ならない。
労働力人口と経済成長を結びつける者は、ツルハシやシャベルを持った労働者が額に汗して働くイメージを持つ。確かにこの工事現場では、労働者の数が工事の進捗に直結するだろう。
しかし、先進国では、ツルハシとシャベルの現場にブルドーザーやクレーンというイノベーションが起き、100人で行っていた仕事が10人でできるようになった。新しい機械の発明、それへの設備投資、さらに労働者の技術力向上があいまって、生産性が上昇して経済は成長するのである。
人口減と共に進行する超高齢化も実は日本にとって大チャンスとなる。