頻発する高齢ドライバーによる事故報道。高齢化がますます進む中、警察と自治体も各地で協力して、65歳以上のドライバーに「免許返納」を促す取り組みを進めている。ただ、当然ながら加齢による視力や認知機能の低下には個人差がある。年齢で境界線を画一的に引くことに違和感を覚えるシルバードライバーもいる。
「個人によって体力も差があるから、年齢だけで一括りにされるのはおかしいように思う」と疑問を呈するのは、日本飛行連盟の高橋淳・名誉会長(94)だ。大正生まれの元特攻パイロットで現在も週1回ペースで飛行機も乗りこなし、事務所通いや買い物のために自動車も毎日乗るという。
「これまで無事故無違反です。3年に一度の運転免許の更新時に何度も認知機能検査を受けていますが、『認知症の恐れがある』と判定されたことは一度もありませんし、コンピュータ診断では50歳くらいの能力と診断されます。検査の担当者はよく『計測器が壊れているのでは……』と首を傾げていますが、毎年のパイロット向けの身体検査の証明書を見せると納得してもらえます」
ことほど左様に個人差は大きい。高橋氏は年齢を重ねるごとに注意深くなったと語る。
「運転に不安はありませんが、“慣れ”が怖い。事故があってはいけないのは当然です。飛行機の場合はとくに年齢を重ねたぶんだけ慎重になっていて、フライト前のチェックリストを何回も確認するようにしています。若い頃はしなかったので、いまの方が安全に飛んでいると思うほどです」
※週刊ポスト2016年12月2日号