芸能

「べっぴんさん」なぜ最速ペースから「最遅」に変わった?

最速ペースで進んでいった『べっぴんさん』だったが…(公式HPより)

 毎回、視聴率20%前後を記録し人気の連続テレビ小説『べっぴんさん』。芳根京子演じるヒロイン・すみれが、戦後の神戸、大阪を舞台に、母親や子供たちのために子供服作りに奮闘する姿を描くストーリー。放送が始まった当初は、前作『とと姉ちゃん』と比べて、展開の速さが注目を集めたが、最近ではペースが変化している。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがその背景に迫る。 

 * * *
 第1週が終わる前にヒロイン・すみれ(芳根京子)の母・はな(菅野美穂)が亡くなって、子役パートもあっさり終了。第2週には、初恋と失恋、姉・ゆり(蓮佛美沙子)の結婚、幼なじみ・紀夫(永山絢斗)との結婚、妊娠と夫の出征、出産、終戦という多くの見せ場が各1話で描かれるなど、「朝ドラ最速」と言えるスピーディーな展開でした。

 また、今後一緒に店を開く仲間とのエピソードをほとんど入れなかったため、視聴者がヒロインに感情移入できず、「展開が速すぎて気持ちがついていかない」という声が続出。「今回の朝ドラは大丈夫か?」という不安から視聴率も下がり、朝ドラでは3作ぶりに20%を下回ってしまいました。

 私自身、「26週もの長期に渡る朝ドラで、最速ペースは必要?」「視聴者がヒロインへの愛着を養うパートを早々に切り上げるのはもったいない」と心配しましたが、第3週から徐々にペースダウン。戦争で多くのものを失いながらも、手作り雑貨を売りはじめ、手芸教室を開くまでの姿を描き、第4週では、友人の良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)と再会してベビードレスを作り、『あさや靴店』の一角で店を開く様子がじっくりと描かれました。

 第5~6週では、良子と君枝の夫が帰還していったんは店を離れながらも、時間をかけてテーブルクロスを完成。第7週では、紀夫の両親から再婚を勧められてショックを受け、栄輔(松下優也)の存在が大きくなりながらも、感動の再会を果たすまでの心の機微が丁寧に描かれました。

 最速ペースから、「時間をかけて1枚の服やテーブルクロスを作る」「夫がなかなか帰ってこない」などのスローな展開に一変した理由は、すみれの控えめな人柄。芳根さん自身、「『言えない』のではなく、『言わない』だけで、心の中に強い思いを秘めている」、制作統括の三鬼一希さんも「決して先頭に立ってリードするような女性ではない」と話しているように、すみれのセリフはヒロインにしては少なく、その分表情や仕草をしっかり見せることで感情表現しているのです。

 その意味で称えられるべきは、演出の素晴らしさ。芳根さんは「脚本にないシーンでも感極まって涙を流すことも多い」豊かな感受性の持ち主ですが、その類まれな魅力を生かすべく“セリフに頼らない演技”を優先させ、スローな世界観を作り上げているのでしょう。

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン