人生で50年間、腰痛に苦しめられてきたという年配の女性。あらゆる治療を試みたが、痛みが消えることはない。ところが、あるストレッチを試したところ、ピタリと痛みが止まった!
11月2日放送の『ガッテン!』(NHK)で紹介された東大医学部附属病院の「腰痛論文」が話題だ。腰痛を訴える人は全国に1300万人以上。しかも、その約85%は「原因不明」。手術やコルセットによる矯正、マッサージ、鍼など多くの治療法があるものの、原因が特定できないため根治しにくく、長年にわたって腰痛に悩まされ続ける人は少なくない。
論文の内容は、そんな厄介な腰痛の「7、8割が劇的に改善した」という画期的なものだった。論文の共著者である原慶宏・武蔵野赤十字病院整形外科副部長が言う。
「腰痛患者の共通点は『筋肉が硬い』ということ。そこで、寝る前に簡単なストレッチを行ってもらいました。すると、1か月足らずで年齢問わずほとんどの人の腰痛が改善したんです」
なぜストレッチが腰痛を改善させたのか。その理由は、「寝返り」にある。腰痛患者は、健康な人に比べて、寝返りを打つ回数が少ない。つまり、寝返りを増やせば腰痛は楽になるのだ。16号整形外科院長の山田朱織医師が解説する。
「人のお腹には内臓脂肪や臓器が集中しているため、仰向けに寝ると何十kgもの重さが腰にかかります。寝返りしないと当然、腰の下から仙骨というお尻の先までが圧迫され、血の循環が悪くなり、疲労物質がたまります。また、人間は寝返りによって、日中に生じた背骨の歪みを元の形に戻しているんですが、寝返りが少ないと、歪んだままで翌朝を迎えることになります。その結果、腰に痛みが出る可能性があります」
昼間どんなにマッサージを受けても、腰痛の原因が夜寝ている間に作られるなら、一向に治らないのも納得だ。
とはいえ、腰痛解消のために「もっと寝返りを打て」といわれても、なかなか難しい。本人は寝ているから意識的には行えない。そこで、寝返りを増やすのに効果があるのが、ストレッチなのだ。
「寝返りは意外にも“全身を使う運動”なんです。普通に生活できている人なら、寝返りするだけの筋力はありますが、全身のどこかの筋肉が硬いと、その部分が柔軟に動かず、寝返りが打ちにくい。寝る前にストレッチで準備運動をしておくことで、寝返りが打ちやすくなると考えられます」(山田医師)