米国医学研究所が2013年に公表した「集団ナトリウム摂取量実態報告」では、「心疾患や脳卒中では、塩分摂取量が低いと病気の見通しに悪影響を与えることがある」と示されている。塩分不足のリスクについて、白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二氏は警鐘を鳴らす。
「塩の主成分であるナトリウムは、血圧を維持するために必要な栄養素です。また、高齢者ほど血圧を気にして塩分を控えがちですが、塩分不足により喉の渇きを感じにくくなって脱水症状に陥るケースがある。塩分摂取量の不足で認知機能が低下するという報告もあります。“減塩すれば元気で長生き”という風潮は改めるべきでしょう」
2014年にアメリカ高血圧学会誌にニールス・グラウダル博士が発表した論文によれば、最も好ましい健康結果が出た塩分摂取量は、米国の推奨基準を大きく上回る6.7~12.6グラムだった。摂りすぎはよくないが無理に塩分を控える必要はないのである。
ただし、厚労省が目標とするレベル(男性8グラム)の減塩を実施したほうがいい場合もある。糖尿病患者やその予備軍、肥満の人がそれに当たる。慢性腎不全など腎臓病患者は特に塩分を体内に溜め込みやすくなっているので注意が必要となる。「塩分を摂取しても、血圧が上がる人と上がらない人がいる」という点にも注意が必要だ。
「塩分を摂ると血圧が上昇する『食塩感受性』を有する人がいます。本来体外に塩分を排出する働きの腎臓が塩分を再吸収してしまうために尿として排出しづらい体質です。
これまでの研究で、日本人の約20%が食塩感受性の遺伝子を持つことが判明しています。現代の医学では食塩感受性が発生するメカニズムはわかっていませんが、遺伝する可能性が高いと推測されているので、血縁者に高血圧患者がいる人は減塩をしてもよいでしょう」(同前)