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岡島秀樹 忘れられない「メジャー初登板の初球HR」

通称「あっち向いてホイ投法」はメジャーでも通用した

「絶対にアメリカで引退したかった」──こう語るのは岡島秀樹(40)。今年2月、オリオールズとマイナー契約し、オープン戦の5試合に登板。自責点0の好投を見せたが、戦力外となり現役を引退した。巨人、日本ハムで日本一を経験し、メジャーのレッドソックスでは世界一にもなった左腕は、「自身の最後」に強いこだわりを持っていた。

「メジャーは全てが華やか。移動はチャーター機で宿泊先は五つ星ホテル。スタジアムの規模も雰囲気も日本とはまったく違う。最近は日本にも“現役バリバリの大リーガーが移籍”と大物選手が来るケースもありますが、本当に凄い選手はアメリカから出ません。僕はホンモノが集まる場所で現役を終えたかったんです」

 最初からメジャー志向だったわけではない。その意識が芽生えたのは、巨人から日本ハムへトレードされた2006年だった。

「巨人は伝統ある球団だから制限が多いんです。僕は力を込めると顔が下を向く癖があって、投げる時は思いっきり地面を見ちゃうんですが、巨人では“下を向かないようサイドから投げろ”とフォームを矯正されそうになった。

 試合に負けた日はロッカールームでさえ浮かれた姿を見せられない。笑顔を見せたら“負けたのにヘラヘラするな”って怒られる。でも、日ハムは違った。試合に負けた日ほど選手たちは努めて明るく振る舞い、“今日はボロ負けしたけど、とりあえず飲みに行って忘れようぜ”ってなる(笑い)。

 当時はヒルマン監督でメジャー帰りの新庄(剛志)さんもいて、球団がメジャーを意識した自由で明るい雰囲気づくりをしていた。それが僕にはやりやすくて、漠然とメジャーっていいな、行きたいなって思うようになったんです」

 翌年に夢が叶いレッドソックスに移籍すると、いきなりメジャーの洗礼を受けることになる。

「初登板の初球、日本の常識では“絶対に痛打されない”アウトローの真っ直ぐを投げました。それがいとも簡単にホームラン。しかも相手は8番バッターですよ。震えるほどショックだったけど、この一球のおかげで自分がすべきことがわかった。以後、打者の研究、投球術を磨くようになり、その年の世界一にも貢献できました」

 成長を実感できた場所だからこそ、「最後は日本よりアメリカで」の思いを抱いた。

【プロフィール】おかじま・ひでき/1975年京都府生まれ。1994年、東山高校からドラフト3位で巨人に入団。日本ハムを経て2007年にレッドソックスに移籍。2012年に日本球界に復帰し2016年に再び渡米。日米通算成績は815試合に登板、55勝48敗56セーブ、防御率3.16

撮影■ヤナガワゴーッ!

※週刊ポスト2016年12月2日号

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