高齢ドライバーによる事故が頻発するなか、警察と自治体も各地で協力して65歳以上のドライバーに「免許返納」を促す取り組みを積極的に進めている。だが、統計で見ても、「65歳を超えたら事故リスクが高まる」という言い方が乱暴であることがわかる。
警察庁が公表しているデータで年齢層別にドライバー(10万人あたり)が起こす死亡事故件数を見た場合、数が最も多いのは「85歳以上」で18.2件。その次に多いのは「15~19歳」の14.7件だ。「80~84歳」の11.5件、「75~79歳」の7.0件に続くのは「20~24歳」は6.2件となる。高齢ドライバーの事故が多いのは事実だが、ニュースにならないだけで若者ドライバーの事故も数多く起きているという現実がある。
一方で、これを契機に地域活性化につなげたい自治体が高齢者向けビジネス需要を掘り起こしたい民間企業と手を結び、「返納」にはさまざまな「特典」もつくようになった。
65歳以上の免許返納率が2年連続1位の大阪府では返納特典に府下600以上の企業が協賛。多くの商店街が協力して商品が5~10%の割引になったり、粗品が受け取れたりする。
「調理器具などを専門に扱う千日前道具屋筋商店街(大阪市中央区)では免許代わりの身分証明書である『運転経歴証明書』を見せて3000円以上の買い物をするとフライパンが付いてくる。他にもフルーツの割引、お好み焼きの割引、カラオケの割引などもあって話題になっている」(地元紙記者)という。
東京都では三越伊勢丹(1都3県の8店舗)や高島屋(都内4店舗)で購入した商品の「自宅への配送無料サービス」、帝国ホテル東京での「直営レストラン・バーラウンジで1割引き」、などの特典がある。
それでも、65歳以上の免許保有者1710万人のうち昨年1年間で免許を返納した人は27万人にすぎないのが現実だ。
※週刊ポスト2016年12月2日号