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夜這いの風習は昭和30年代まで存続 大切な仕組みだった

 性の歴史を学ぶ中、本誌は1冊の興味深い本を発見した。タイトルは『よべこき―奥会津の秘められた民俗―』(デザイン広報社)である。「よべこき」とは福島県奥会津では「夜這い」を意味するという。奥会津博物館研究員の渡部康人氏が「よべこき」についてこう語る。

「夜這いに関する資料としては、昭和26年に出版された柳田国男監修の『檜枝岐民俗誌』があります。この書には娘が一人前の女性になった時には、男性が人目に触れずに通いやすい部屋に娘を移動させるとか、将来の婿として好ましい青年は積極的に世話するといった話が書かれています」

 元天理大学文学部教授で民俗学者の飯島吉晴氏によれば、夜這いの風習は地域によっては昭和30年代まで存続していたという。

「男女が自主的にパートナーを選ぶ、自由恋愛のシステムです。いきなり女の部屋に押しかけるのではなく、祭礼などで意気投合した相手に忍んでいきました。夜這いを受ける女性はもちろん、女性の両親も了解済みということが多かった」

 また、佛教大学歴史学部教授の八木透氏によれば、夜這いは社会身分や貧富の格差が大きい村では盛んにならなかったという。

「男女の自由恋愛ですから、家同士の関係がフラットな地域で発達しました。若者集団である『若者組』が実質的に夜這いを管理していて、女性側にも拒否権があり、セックスを強要するものではなかった」

 夜這いというと現代では何か猥褻で淫蕩なイメージがするが、本来は村の若者たちの結婚を促進し、出産を通じて農村の働き手を生むための大切な仕組みだったのである。

※週刊ポスト2016年12月2日号

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