いわゆる「人権モンスター」の攻撃はテレビCMや広告にも及ぶ。大手広告代理店出身のネット編集者・中川淳一郎氏は「広告業界はいま、クレームのリスクを恐れ過度に萎縮している」と語る。同氏が広告「打ち切り」「変更」の事例を解説する。
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・エーザイ「チョコラBBドリンク」(1991年)
桃井かおりの「世の中、バカが多くて疲れません?」のセリフが話題に。「世の中、お利口が多くて疲れません?」に変更。
・日産自動車「スカイライン」(1996年)
牧瀬里穂の「男だったら乗ってみな」のキャッチコピーに「男女差別」の声。「好きだったら乗ってみな」の別バージョンに変更。
・コカ・コーラ「からだ巡り茶」(2007年)
広末涼子の「ブラジャーが透けるほど汗をかいた最後っていつだろう」のセリフを一部の消費者が「不快」と指摘。「こんなに汗をかいた最後っていつだろう」のバージョンをオンエア。
・岩手県奥州市「蘇民祭」(2008年)
ふんどし姿の男性や、髭面で毛深い半裸の男性がアップで写るポスターを、JR東日本が「不特定多数のお客様に不快感を与える可能性がある」として奥州市にデザイン変更を要求。駅構内での掲出が見送られる。
・ホクト「きのこ」(2013年)
スーパーで買い物をする鈴木砂羽に、“きのこ精”の要潤が「奥さん、普通のきのこと立派なきのこ、味がいいのはどっち?」と背後から囁くCMに「卑猥」との声。「総合的な判断」(同社営業企画課)によって差し替えられた。
・ルミネ(2015年)
「変わりたい? 変わらなきゃ」がテーマのネットCM。男性上司が女性部下に発した「大丈夫だよ、(あなたは美人とは)需要が違うんだから」のセリフが「セクハラ」と大炎上。打ち切り、不買運動を呼びかける声も出た。
【PROFILE】中川淳一郎/なかがわ・じゅんいちろう。1973年生まれ。東京都出身。一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。2001年に退社後、ネット編集者、ライター、PRプランナーとして活動。近著『バカざんまい』(新潮新書)など著書多数。
※SAPIO2016年12月号