築地市場移転問題は長期化する──小池百合子・都知事が豊洲への移転時期を「早くても来冬」と明らかにすると、メディアの大騒ぎは「豊洲の地下水」から「業者への補償」というカネの問題にシフトした。だが、移転論議の原点である「食の安全」に関する視点がすっぽりと抜け落ちてはいないか。
「(移転は)2017年冬から2018年というのが実際の見通し」──小池氏が定例会見(11月18日)で見通しを明らかにした翌日、新聞各紙は「延期コスト」が高くつくことに焦点をあてた。
〈水産卸6業者らの試算では、延期による損失額は今月7日からの1カ月で4億3500万円。水産仲卸や青果業者を加えると、さらに膨らむ〉(『朝日新聞』11月19日付朝刊)
都政担当記者が解説する。
「使っていないのにかさむ豊洲の光熱費や移転を前提に雇った従業員の人件費などが大きい。年間50億円以上の損失が業者側に出るのは確実です。さらに移転が延びて損失が膨らむと、都は都民の税金である一般会計から補償していかざるをえなくなるでしょう」
批判を見越してか、小池氏は豊洲開場後に都が払う運営コストが1日あたり約2100万円にも上ることを挙げ「経費削減を指示した」と強調した。メディアもそれに追随し、「延期が高いのか」「移転が高いのか」というカネの問題が争点になりそうな雲行きだ。
だが、そうした議論の中で置き去りにされがちなのが、老朽化した築地に居続けるリスクだ。