本誌・週刊ポストが前号、前々号で展開した「『塩分を減らせば血圧下がる』は間違いだった」キャンペーンは、医学界でも大きな波紋を広げた。賛否両論寄せられたが、医師たちからは「高血圧治療において、減塩の重要性は揺るがない」という反論も多かった。彼らとの議論から、「高血圧問題の真実」に迫っていく。
本誌では、厚生労働省が掲げる1日あたりの塩分摂取量の目標値「男性8グラム未満、女性7グラム未満」より多く摂取しても高血圧になるとは限らず、「日本人の平均摂取量12グラムなら問題はない」とする疫学データや専門家の見地を伝えてきた。
現代医学では高血圧の原因を特定できない患者が多いことから、腎不全など腎臓に持病のある人などを除けば、「過剰摂取は良くないが、無理に塩分を控える必要はない」というのが本誌の主張である。
このように論じた根拠のひとつが「インターソルトスタディ」の結果である。1988年にロンドン大学などが共同で日本の大阪や富山、英米など世界32か国52地域で約1万人を対象に塩分摂取と血圧の関係を調査した。その結果、「1日の塩分摂取量が6~14グラムの人には塩分摂取量と高血圧に相関はなし」と判明したのだ。
しかし、冒頭で紹介した「男性8グラム未満、女性7グラム未満」の目標値を定めた「日本人の食事摂取基準」(厚労省、2015年)の策定検討会座長を務めた浜松医科大名誉教授の菱田明医師は、「『インターソルトスタディ』で注目すべきはそこではない」と反論する。
「一般的に体が必要とする食塩摂取量は3グラム程度だといわれています。つまり、本来それ以上は塩分の摂り過ぎであり、摂取量6~14グラムの間で血圧の上昇と関係が見られなかったという理由だけで『減塩をしなくていい』というのは無理がある。
『インターソルトスタディ』では、塩分摂取量が6グラム以下になると明らかに血圧が下がるというデータも示している。こちらに注目すべきです。6グラム以下の塩分摂取を目指すべきでしょう」