ママチャリから高級ロードバイクまで、幅広い年齢層や用途で親しまれている自転車だが、いざ乗ってみると意外と厄介なのが駐輪だ。ほんの少しの時間、自転車を駐輪していたら撤去されてしまった場合、やはり罰金は払わなければならないのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
銀行の前に自転車を停めていたところ、その日は不法駐輪自転車の取り締まり日だったらしく、私の自転車もトラックで持って行かれてしまったのです。引き取りに行くと罰金1500円を徴収されました。しかし、銀行の前に駐輪していたのは10分ほどなのです。この場合でも、支払わなければいけませんか。
【回答】
自転車の野放図な駐輪は、歩行の妨げとなるだけでなく、道路を狭くして交通の安全も脅かすことになります。こうした事態に対処する「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」があります。
この法律は、自転車の利用環境の整備を目的とし、自転車の駐車対策の総合的推進も図ろうというもので、行政に対し、駐輪場等の整備を求めています。同時に駐輪場以外の場所に置かれている自転車等で、その利用者が自転車から離れているため、直ちに移動できない自転車を「放置自転車」と定義し、その撤去に努めることも求めています。
そして、撤去した自転車の保管、保管自転車の公示、利用者への返還措置、一定期間経過しても引き取りのない自転車の売却や廃棄処分、さらにはこれらの費用の利用者負担について、自治体が条例で定めて、その実行に努めるよう規定しています。
また、各市町村や東京23区は、この法律に基づいて条例を定め、具体的な処理の仕方や費用について、自治体の実情に合わせて規定しています。多くは一定の地域を、放置禁止区域と定め、その中の放置自転車の撤去や保管を対象としています。
放置禁止区域は、あらかじめ公示されるだけでなく、その場所に放置禁止区域であることを示す標識も掲げられているはずです。問題の撤去や保管費用は、前記のとおり、法律により放置自転車の利用者負担で、実費を勘案した金額になりますが、条例では通常、その上限額を定める形式になっています。額は地域によってさまざまで、都内でも一定していません。
銀行にいた、わずかな間でも放置自転車の要件を満たせば撤去されます。その費用は法律により利用者負担ですから、徴収されてもやむをえません。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2016年12月9日号