巷を賑わわせている「ヌーハラ」なる言葉をご存じだろうか。
「ヌードル・ハラスメント」の略で、日本人がラーメンや蕎麦などの麺類をすする音が、外国人に「嫌がらせ」レベルの不快感を与えているというのだ。
この言葉に飛びついたのはテレビの情報番組だ。こぞって「ヌーハラ」問題を取り上げ、「豚みたい」「行儀が悪い」という外国人の“苦情”を紹介した。
『とくダネ!』(フジテレビ系)では、女性ディレクターとその彼氏のイタリア人が登場。ラーメンをすする女性に不快な表情を浮かべる彼の顔をアップで映し出す“凝った演出”だった。
しかし、いくら外国人が嫌がるからといって、“ズズズッ”を控えなきゃならないものなのか。
「なんでもかんでもハラスメントにするな」と怒りの声を上げるのは、食通で知られる俳優の梅沢富美男氏だ。
「不快だからって、その国の文化を否定するのはおかしいよ。じゃあ、外国人が『マツタケは軍人の靴下の臭いだからマツハラだ!』って言ったら、マツタケを食べないのか。
日本人がワインをクチュクチュ音をたてて飲むのを嫌だと言ったり、南インドの家に招かれて手でカレー食べるのは汚いって言ったりしたら、マナーを知らない奴だって笑われるだろ? 蕎麦は音を立てて食べるのがうまいし、日本のマナー。その国の食い物は、その国の食べ方でいただくのがうまいんだよ。外国人がとやかく言うことじゃない!」
ワインを「クチュクチュ」と空気を含ませて飲む行為は日本人も「ツウ」として受け入れている。フランス料理ではパンを皿ではなくテーブルのクロスの上に直接置くが、それを「不潔だ」「ハラスメントだ」と騒ぐこともないはずだ。
そんな日本人を「欧米人に気を遣いすぎ」と呆れるのは、エジプト出身のタレント・フィフィ氏だ。週に1度は蕎麦を食べるという彼女は、こう主張する。
「日本人の言う『外国人』ってほとんどが欧米人のことでしょう。
ヌーハラも、外国人が不快に思っているというよりも、それを聞いた日本人が『欧米人から不快に思われるのは恥ずかしい』という気持ちを抱いたのが原因じゃないのかな。日本人は欧米人への劣等感が強く、顔色を窺いすぎな気がします。
欧米ではハンカチに『ブーッ』と大きな音を立てて鼻をかむ。でも、それを日本人は『不快だ』とは言わない。『あっち(欧米)の文化の方が上だから、それが正解』と自分に言い聞かせる。それで自国の文化を否定されると不安になる。だからといって欧米文化に合わせていたら、その国の文化が消えちゃうよ!」