酒飲みの敵「ビール税」改正が来年度税制大綱に盛り込まれる。これは現在ビール77円、発泡酒47円、第三のビール28円の税額を55円に統一しようというものだ。
ビールだけに高率の税額が課される理不尽な状況に、ビール業界は繰り返し減税を求めたが、その要求は無視され続けた。そこで各メーカーは商品開発力で反撃に出る。1994年、サントリーが麦芽比率を65%以下に抑え、ビールの定義要件を下回る「雑酒‐発泡酒」に区分される『ホップス』を発売すると、手頃な値段でビール風味が楽しめると、大ヒット商品になった。当時を知るビールメーカー幹部が言う。
「ホップスはビールより麦芽比率が2%下回るだけで、税率はビールより約30%も低くなった。当時350ミリリットル缶のビールが225円で、ホップスは180円。多くの消費者が“50円近く安いのにビールと変わらない”と喜んで買ってくれました」
税収減を恐れた財務省は1996年、麦芽比率が50%を超える発泡酒は税率をビールと同じにする税制改正を行ない、“ホップス潰し”に打って出た。
これに対し、サントリーは麦芽比率をさらに下げて25%未満に抑えた『スーパーホップス』を投入して応戦。各メーカーも麦芽比率50%未満の発泡酒を商品開発し、1998年発売のキリン『麒麟淡麗』などのヒット商品を生み出した。
2003年4月に発泡酒は市場シェアの約5割(月単位)を占めて過去最高を記録。だが、財務省の動きは早く、翌月には酒税法を改正し、またしても発泡酒の税率を引き上げたのだ。さすがにビール業界も「これでは開発努力が無駄になる」と猛反発し、大手ビールメーカーのトップらが街頭で署名活動を行なう抗議行動を始めた。
そして2004年、発泡酒よりさらに税率が低くなる第三のビール『ドラフトワン』をサッポロが発売した。以降、『麦風』(サントリー)、『のどごし〈生〉』(キリン)、『アサヒ新生』(アサヒ)と各社がこぞって新市場に参入していったのである。
「これら第三のビールは、麦芽ではなく大豆タンパク質などを使うか、発泡酒にリキュールを加えて分類カテゴリーを変えるという手法が用いられています。各社、あらゆるアイデアを詰め込んで新商品開発に励んだ賜物でした。
ところが2006年には第三のビールへの増税が実施されました。“努力しても潰される”の繰り返しで、各社、政府とのイタチごっこに疲れ果てている状況です。財務省の税改正はただの“官による民業圧迫”です」(前出・メーカー幹部)