2016年も終わりに近づき、プロ野球界は現在契約更改シーズンの真っ最中。今オフは球界の至宝・大谷翔平(22)の大幅アップなどが注目されるが、サラリーマンの生涯賃金にも匹敵するような巨額の年俸を巡っての交渉とはどのようなものなのか。ある巨人OBの投手は交渉の“やりにくさ”についてこう語った。
「先輩からは“契約更改であまりモメると、ダメだった年に大幅ダウンを食ったり、トレードに出されたりするぞ”とアドバイスされました。実際、ゴネた選手が放出されるのを見ると、やはり委縮しますよね」
別のチームのあるOBは、「金額を巡って球団とモメた選手が引退後、コーチなどでチームに残るケースは稀」とも証言した。そうした情報があってなお、契約更改で粘りに粘る選手として有名だったのが、ダイエーや近鉄で活躍したカズ山本(和範)だという。
「ダイエー時代には8000万円の提示に首を振らず8100万円を主張。3回目の交渉で100万円上乗せに成功したことがあります」(スポーツ紙記者)
かつては、毎年のように交渉で粘る選手に対して、最初は低い額を敢えて提示する球団も珍しくなかったという。
虚々実々の攻防を経て決定をした年俸。翌日のスポーツ紙を賑わすのが「推定額」だ。どの程度正確なのだろうか。阪神タイガース球団社長を務めた野崎勝義氏は、「推定額の報道と実際の年俸はほぼ一致している」と語る。これには選手側の思惑もある。
「契約更改の記事は税務署が細かくチェックしている、というのが選手間の定説なんです。実際より高い金額で報じられて、申告時にあれこれ詮索されたら困る。そんな心理があるので“大台には乗った?”といった記者の質問に嘘をつくことは稀です」(在京球団関係者)
明暗分かれる会見の裏にある“密室のやり取り”を想像すると、契約更改のニュースがより一層楽しめるようになる。
※週刊ポスト2016年12月9日号