アメリカの次期大統領にドナルド・トランプ氏が決まって以来、これからの経済はどうなるのかという予測が様々に行なわれている。これまでのグローバル主義から保護主義に転じると明言しているトランプ氏の経済政策によって、今後、どのような未来が待っているのか。経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。
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トランプ大統領の誕生で世界はますます反グローバリズムの潮流が強まる、という指摘もある。しかし、グローバリズムを否定した先に待っているのは悪性インフレだ。
アメリカ人が、低所得層でもそれなりに豊かな生活を送ることができているのは、グローバル化のお陰である。様々な商品が世界の最適地でより安く生産できるようになり、それを輸入することによって物価が抑えられているのだ。実際、ウォルマートやコストコに並んでいる安い商品は、ほとんどすべてが中国をはじめとする「メイド・イン・世界各国」だ。
また、消費者が買う消費財だけでなく家畜の飼料や原材料などもグローバル化によって安くなり、その恩恵を世界中の人々が享受している。それは日本も同様で、牛丼が1杯300円台で食べられるのも、アメリカ産やオーストラリア産の安い牛肉や食材・原材料を輸入しているからである。
つまり、もしトランプ氏が中国製品などに高い関税をかけ、いろいろなものをアメリカ国内で作るようにしたら、アメリカの物価はとどまるところを知らずに上がり続け、コストプッシュインフレになって生活費が跳ね上がるのは火を見るよりも明らかなのだ。そうなれば、トランプ氏は1期4年で葬り去られる。葬り去られない唯一の方法は、ただ言い続けるだけで何も実行しないことだが、その場合は4年もたないだろう。