今季最終戦(リコーカップ)を待たずに2年連続の賞金女王を決めた女子プロゴルファー・イ・ボミ(28)。1988年に日本ツアーがスタートして以来5人目となる快挙だ。
「今やイ・ボミは日本ツアーの顔。日本人選手より多くのギャラリーを引き連れてラウンドするし、ファンクラブも3000人超え。日本人選手の誰よりも多い」(スポーツ紙記者)
ボミは11月の「伊藤園レディース」で通算20勝を達成。通算30勝以上で得られる“永久シード”(ツアー公認試合に永久に出場する権利)獲得も見えてきた。これは日本ツアー史上6人しか成し得ていない快挙である。
だが、現状のままでは、たとえ30勝をマークしても永久シードを手にする可能性は限りなくゼロに近い。
「ボミは日本ツアーに参戦していますが、単年のツアーシード権を得られるクォリファイングトーナメント(QT)から勝ち上がってきた選手で、日本でのプロテストは受けていません。そのため日本ツアーの正規会員ではない。永久シードの資格は会員であることが必須条件なのです。
QTからの参戦が多い外国人選手を排除したい日本女子ゴルフ協会側の思惑があるためです」(ツアー関係者)
この外国人選手“差別”はゴルフ界に限ったことではない。大相撲の横綱・白鵬が“親方”になれない理由と同様の構造である。親方の必須条件である“年寄名跡”は日本国籍を有する者にしか与えられない。そのため、モンゴル国籍の白鵬はどれだけ結果を残しても現状、親方にはなれないのだ。
白鵬は本誌・週刊ポスト2016年7月22・29日号のインタビューで「今の相撲界の制度では、外国人力士は入門できるが、その後(親方などとして相撲協会に)残ることが難しい」と苦しい胸の内を明かしている。ゴルフジャーナリストの菅野徳雄氏は次のように指摘する。
「そもそも永久シードが日本のゴルフをダメにしている気がするが、イ・ボミにやらっれぱなしの日本人選手も情けない。とはいえ、現状、永久シード制度がある以上、成績を残したものは受け入れるのが筋だと思います」
30勝が目前となれば議論が巻き起こるのは間違いないところだが、日本の女子ゴルフ界の隆盛を支える彼女へのリスペクトだけは忘れてほしくないものである。
※週刊ポスト2016年12月9日号