新薬の特許が切れた後に販売される「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」。最近はすっかり浸透して、調剤薬局で薬剤師から、「ジェネリックにしませんか?」と声を掛けられるのが当たり前になってきた。
最大の特徴は、新薬と同じ有効成分なのに価格が低いことだ。実際に新薬とジェネリックではこれだけの価格差がある(医薬制度研究会・著『医者からもらった薬がわかる本』より)。
●ロキソニン(鎮痛剤)
1錠(60mg)15.90円/後発1錠5.6~9.6円
●アリセプト(認知症治療薬)
1錠(5mg)300.6円/後発1錠125.7~158.2円
●ディオバン(高血圧治療薬)
1錠(20mg)29.60円/後発1錠9.9~11.40円
●メバロチン(高脂血症治療薬)
1錠(5mg)45.50円/後発12.40~24.4円
ジェネリックの価格はどう決まるのか。東京大学大学院薬学系研究科特任准教授の五十嵐中氏が解説する。
「現在の制度では、最初に保険適用されるジェネリックの価格は新薬の5割と決まっていて、その後時間が経つごとに安くなっていきます。また、ジェネリックが10品目以上同時に出た場合、現行の5割から4割まで価格が引き下げられます。できるだけジェネリックを推進したいという国の意向があります」
国がジェネリックをより身近にしようとするのは、現在約10兆円となり、毎年増加する国の薬剤費を抑制するためだ。
ただし、現状では海外に比べてジェネリック普及は進んでいない。日本ジェネリック製薬協会によれば、国内におけるジェネリックのシェアは2014年度で52%。米国92%、ドイツ83%、イギリス73%に遠く及ばない。五十嵐氏が指摘する。
「効果を心配して敬遠する人も多いですが、ジェネリックと新薬の効き目は変わりません」
医療費削減のため、国は2020年度末までに市場シェアを80%にする目標を立てている。これにより、年1.3兆円の医療費削減効果があるという。
ちなみに、調剤薬局で“ジェネリックにしませんか?”と聞かれることが増えたのは、診療報酬改定でジェネリックを多く出した薬局に報酬が手厚くなる仕組みが導入されているからだ(後発医薬品調剤体制加算)。医療機関にもジェネリック処方を増やしたほうが得になるインセンティブが組み込まれている。ここにもちゃんとカラクリがあるのだ。
※週刊ポスト2016年12月9日号