カジノを解禁する統合型リゾート(IR)推進法案が、いよいよ今国会で成立する公算が大きくなった。カジノ合法化に際して最も懸念されているのは、「ギャンブル依存症」に陥る患者がますます増え、治安の悪化も含めて深刻な社会問題に発展する恐れがあるということだ。
そもそもギャンブル依存症とはどのような疾患で、適切な治療法はあるのだろうか。『依存症のすべて』著者で、行動薬理学に詳しい廣中直行氏(医学博士)に聞いた。
──ギャンブル依存症の定義とは?
廣中:薬物依存などと同じく「ギャンブルをやめたくてもやめられない」のが大まかな定義といえます。具体的にギャンブルにのめり込むる頻度や使う金額の枠が決まっているわけではなく、健康が損なわれているとか苦痛があるといった主観的な問題が重要です。
──きちんとした診断基準はあるのか。
廣中:今日ギャンブル障害と言われている問題は「病的賭博」と言われ、1980年から精神疾患とされています。
精神医学の診断基準に照らして依存症の疑いが強い人は、ギャンブルのために学業や仕事、家庭生活がおろそかになったとか、問題を隠すためにウソをつくようなケースです。その状況は、家出や失職、犯罪、自殺といった深刻なエピソードの数々からも知られています。
私の意見としては、ギャンブルのために借金をしたことがあるかどうかが、楽しみの範囲と依存症のひとつの境目ではないかと思います。
──ギャンブル依存症患者の人数、性別、なりやすい人の傾向などは?
廣中:2009年に厚生労働省の研究班が調査したデータでは、ギャンブル依存症が疑われる人はおよそ500万人いて、男女比は6:1で圧倒的に男性が多い。この比率は外国と比べても異様に突出しています。日本にはパチンコやスロットといった日常生活に浸透した身近な娯楽が蔓延していることが大きな原因です。
ギャンブル依存症になりやすい人の傾向は、外国のデータから次の3タイプに分けられています。(1)勝つことが楽しくて自然にのめり込んでいく(2)イライラ、抑うつが強く、ネガティブな感情を解消するためにギャンブルをやる(3)攻撃的、やや反社会的で「勝負」に挑みかかっていく──。