今年で6年目を迎えた、大手旅行代理店・クラブツーリズム社主催の「視覚障がい者自動車運転ツインリンクもてぎツアー」は、毎回満員と反響を呼んでいる。その様子を取材した第1弾(11月23日配信)に続き、お届けする。
「私以外は家族全員晴せい眼がん者。旅行もよく行きますが、私はつねに“連れて行ってもらう”立場なんですね。もちろん家族には感謝していますよ。でも、見えない景色見て、熱い温泉入って、食べたくない料理食べて…。正直言って、あとをついていくだけの旅にはちょっと飽きてたんです」
そう語るのは、今回家族を離れて単独でツアーに参加、運転も生まれて初めて…というH.K.さん(女性・56才)。
「グループメールでツアーの存在を知り(※参加者のほとんどは、パソコンやスマホの読み上げ機能、音声入力を活用している)、独断で申し込みました。順番待ちの時間ですら楽しい。自分で、しかもクルマを運転するなんてワクワクします」
毎回、参加者の約半数はリピーターという人気ツアー。オリエンテーションで周回路や注意事項の説明を受け、指導員とともに車に乗り込む。盲導犬も同乗可能だ。最初はなかなか発進できなかったり蛇行しがちだったクルマも、周回を重ねるうちに、どんどんスピードが上がり、ハンドルさばきが安定してくる。1回目の周回を終えた参加者はみな、高揚した様子で下車する。「むっちゃくちゃ楽しかったー!」と笑顔が止まらない人もいる。
「夕食でテーブルに着くころには、みなさん、運転体験の話で盛り上がってるはずですよ。運転という興奮を共有した“仲間”ですからね」(クラブツーリズム ユニバーサルデザイン旅行センター課長・渕山知弘さん)
衝突回避や自動ブレーキシステムが導入され、自動運転機能の開発が進む昨今のクルマにあって、法改正などの必要性はあるものの、視覚をサポートするクルマの開発も技術的には決して夢ではない。
「今、運転は嫁さん任せなんですけど、本当は助手席に乗せてあげたいんですよね」
早足でクルマに向かう男性参加者のつぶやきが印象的だった。
※女性セブン2016年12月15日号