箱根駅伝本番までいよいよ1か月を切った。お馴染み「EKIDEN NEWS」の“博士”こと西本武司氏は、箱根ランナーたちの仕上がりを見るため、毎週のように開かれる記録会、大会に足を運んでいる。だが、今年は“重大レース”の日程が重なるという事態が起きた。彼らはその日を一体、どう乗り越えたのか。
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11月26日、私と相棒のマニアさんは法政大学多摩キャンパスに足を運んだ。都心から電車とバスで1時間半。国内の陸上長距離レースの中で最も好タイムが期待される「八王子ロングディスタンス」(主催・東日本実業団陸上競技連盟ほか)を見るためだ。
この1万m記録会には、近年の箱根を彩ったスターが勢揃いする。2015年箱根で1区区間賞の中村匠吾(駒澤大出身、富士通)や東洋大で2012年から3年連続区間賞の設楽悠太(Honda)など名前を挙げればきりがない。今年は日本記録保持者の村山紘太(城西大出身、旭化成)が見事なスパートを見せ、日本人トップでゴール。来年のロンドン世界陸上の参加標準記録(27分45秒)を突破した。
その猛者の中に昨年、「青学四天王」と呼ばれた1人の小椋裕介(ヤクルト)がいた。レース後の小椋が、こんな言葉を口にした。
「後輩の田村(和希、青学大3年)に抜かれました」
ほぼ同時刻、田村は慶応大日吉キャンパスで行なわれていた「1万m記録挑戦競技会」(関東学生陸上連盟主催)に出走していたのだ。青学大の主力が出場した日吉の情報が、次々と八王子にも伝わってきていた。
全日本駅伝2区で7人抜きの快走を見せた田村は好調そのままに28分18秒31を記録。自己ベストを28秒も更新し、2年前の主将・藤川拓也(現・中国電力)の学内記録を塗り替え、小椋の自己ベスト(28分18秒48)も抜き去った。
八王子に届いた情報は衝撃的だった。青学大はルーキー鈴木塁人や主将の安藤悠哉(4年)が自己新を出し、上位10人中6人を独占。昨年の四天王から神野大地(コニカミノルタ)、久保田和真(九電工)、小椋の3人が抜けた穴を補って余りある選手層を見せつけた。