ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)が好調だ。タイムシフト視聴率(録画再生率)では10月放送の全番組中でトップとなった。
物語は星野源(35才)演じる津崎平匡(ひらまさ)が家事代行として働きに来ていた新垣結衣(28才)演じる森山みくりと契約結婚をすることからスタートする。この35才まで女性と交際したことのない“プロの独身”、平匡のキャラクターがなぜか女性に受けているのだ。
星野源のかねてからのファンは、「源さんがぴったりなのは、『11人もいる!』(2011年放送・テレビ朝日系)で演じたようなトホホな役。平匡さんも話が進むにつれてトホホ感が出てきて好きになりました」と語る。
「実際に学生を見ても、特に男性は以前と比べて恋愛にがっついていないんです。でも、恋愛に興味がないわけではない。一方、女性の学生はプレゼンをするにしても活発で主導権を握ることが多い」
こう分析するのは早稲田大学文化構想学部教授の岡室美奈子さんだ。
「雇用関係という枠組みの中でコミュニケーションするのもリアルですね。昨今は、なにかしら枠組みがあると安心してコミュニケーションをとれる人が多いんです」(岡室さん)
平匡のような男性像にリアリティーが感じられる現代の土壌があるからこそ、ドラマに興味を持つ人が多いのだ。ポップカルチャーに詳しいライターの西森路代さんは話す。
「以前ならば、恋愛の上級男子にオクテな女子が『壁ドン』されるようなラブ・コメディーが人気でしたが、現実にはそんな人は少ないし、そろそろ食傷気味。上から目線で『おれについてこい』という昔ながらの“男らしさ”にこだわる人よりも、もじもじしていて、煮え切らなさはあるけれど、“感謝と敬意”を持って一緒に歩んでくれる平匡さんのほうが新鮮でよく見えてしまうのではないでしょうか」
西森さんは平匡の倫理観も関係していると指摘する。
「平匡が、同僚の風見から、みくりを家事代行としてシェアしたいと提案されると、『シェアする、嫌な響きだ。ものや食べ物のようで…』とひとり言を言うシーンがあります。女性を下に見たり、ぞんざいに扱わないところも人気に大いに関係があるのではないでしょうか」(西森さん)
キスをしたと思ったら急に避けるなど、みくりを翻弄する平匡だが、それは自分の気持ちだけを優先させず、相手を尊重したいと思う優しさの裏返しでもある。そんなところを視聴者はちゃんと見ているからこその平匡人気、『逃げ恥』ブームではないだろうか。
※女性セブン2016年12月15日号