医師に「高血圧」と診断され、勧められるまま降圧剤を飲み続けている人が多いといわれる。このまま飲み続けていいものなのか疑問を抱いている人も少なくない。
実際に、食生活の見直しや運動などで高血圧患者が降圧剤を使わずに済むようになった事例は多い。管理栄養士による食事の見直しや運動指導などを高血圧治療に取り入れている坂東ハートクリニックでは、過去3年間、毎年100人以上が降圧剤をやめている。院長の坂東正章医師はこう語る。
「主治医が患者の全身の状態を見定めながら、降圧剤の減量や中止を慎重に検討します。動脈瘤や心肥大、慢性腎臓病など高血圧に伴う合併症を生じている人は降圧剤中止が困難なケースが多いが、食事と運動の調整で降圧剤の量を減らせるケースは多い」
降圧剤を「やめやすい人」がいれば「やめにくい人」もいる点にも注意が必要だ。
オーストラリアのマーク・ネルソン博士のグループが、2002年に『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』に発表した論文がある。北品川藤クリニックの石原藤樹院長が解説する。
「その論文には、65~85歳で降圧剤をやめた患者を1年間観察した結果、74歳までの人の方が、成功率が高かった。75歳以上の高齢者は動脈硬化が進んで血圧の変動が大きいために降圧剤をやめることが比較的難しい」
他にも、1日の血圧の変動幅が人よりも大きい人や、ストレスで一気に血圧が上がるタイプの人は「やめにくい人」だと石原氏は指摘する。
「塩分感受性(※注)のように血管にも感受性があります。“ストレスに弱い”人は降圧剤をやめる変化の影響を受けやすい。やめることができないのではなく、より慎重にやめる必要があるということです」
【※注/塩分を摂取することで血圧が上がる体質のこと。日本人は遺伝的に20%が持っているといわれる】
では、降圧剤をやめるのはどのタイミングが良いのか。