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宴会芸の定番「野球拳」 本来の姿は負けても脱がない

伊予鉄野球部による「本家野球拳」(1925年撮影)

 宴会芸の代名詞「野球拳」には、意外な歴史があった──。多くの人がイメージするのは、「野球~す~るなら~」の掛け声で始まり、「アウト! セーフ! よよいのよい」でジャンケン、そして負けたほうが1枚ずつ服を脱いでいくゲームではないか。

 これは『コント55号の裏番組をぶっとばせ!』(日本テレビ系、1969~1970年放送)がきっかけで普及したもの。萩本欽一らと対戦した女性ゲストが服を脱ぐ姿に、国民は興奮した。

 しかし、野球拳の“本来の姿”は違う。元々は、1924年に愛媛県松山市で生まれた、れっきとした郷土芸能なのである。和太鼓奏者で本家野球拳4代目家元を務める澤田剛年氏が説明する。

「伊予鉄道電気(後の伊予鉄道)野球部が、試合後、相手チームとの夜の懇親会で披露した“踊り”が野球拳の始まりです。その後、野球拳は伊予鉄野球部の宴会芸の定番となり、前田伍健を宗家とする家元制度を導入しました」

 松山市は“元祖・野球拳”を文化として継承し、松山春まつりでは全国大会を開催する。一般の野球拳同様、ジャンケンや脱衣はあるのか。

「ジャンケンも踊りの一部。当然、負けても脱ぎません!」

 と澤田氏。テレビで“野球拳”が始まった時には初代家元が日本テレビに抗議するも聞き入れてもらえず、悔しい思いをしたという。

 しかし、後日談がある。2005年の松山春まつりに萩本欽一が参加。その際に、「本当の野球拳を知らなかった。申し訳ない」と謝罪し、“歴史的和解”が成立していたのだ。野球拳に歴史あり。

※週刊ポスト2016年12月16日号

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