〈ここ数年、焼き鳥を串から外してシェアをして召し上がっているお客様が多く見受けられます。凄く…悲しい〉
発端となったのは、東京・田町の焼き鳥屋店主が11月末に綴ったこんなブログだった。
「焼鳥屋からの切なるお願い」とのタイトルで、一本一本、丁寧に刺して焼いた焼き鳥が串から外されることを、「これだったら切った肉をフライパンで炒めても同じです。焼き鳥じゃないし。刺す意味ないし」と嘆いた。その内容が反響を呼び「焼き鳥論争」が巻き起こったのだ。
焼き鳥を愛して止まない“トリラー”も続々声を上げた。「串から外す奴の気が知れねぇんだな。外して食べるのは愚の骨頂だよ」と眉間にシワを寄せて憤るのは、浅草キッドの玉袋筋太郎氏。
「焼き鳥は串から外さずにかぶりつくもの。そもそもシェアって考えが間違ってて、焼き鳥は一人一串、食べたい串を頼むべきだろ。“串外し”なんて、寿司屋でネタとシャリを別々に分けて食うようなもの。柔らかいレバーを外して身をボロボロにしたり、固い砂肝を必死になって箸で外す奴はバカなんじゃないか」
大の酒好きでもある玉袋氏は、ツマミとしての食べ方にも熱いこだわりを示す。
「横からガブリとかぶりついて串を引き、口の中に焼き鳥をペロっと収める。最後は頬っぺに一本、タレの筋を付けるのが粋ってもんだ。その流れのまま、串入れに串をポーンと入れて、酒のグラスをグイッとやるのが呑ん兵衛の“ルーティン”だよ」(同前)
辛口コラムニストの小田嶋隆氏は、「外す、外さないは客の自由だ」と主張する。
「最終的に串を抜かないと食べられないのだから、食べる前に外しても外さなくても同じ。パスタを手で食べるといった明らかなマナー違反でもなく、どう食べようが客の勝手です。料理人が必死に作るのは理解しますが、客が串を外したからといって怒らんでもいいでしょう」
小田嶋氏は続けて、「手軽に食べられるのが焼き鳥の魅力」と強調する。
「焼き鳥は蝶ネクタイにタキシード姿で食べる料理じゃない。最近は、他の料理でも『お塩だけで食べてください』『まずは何もつけずに』など、食べ方まで一方的に指定する店が多いですが、“上から目線”で店の食べ方を押しつけないでもらいたい。“好きなように食べてくれ”という気楽さこそ大衆食・焼き鳥の魅力です」
※週刊ポスト2016年12月23日号