猫は他の動物に比べて腎不全で死亡する割合が突出して高い。腎不全の予防薬が実用化されると、寿命が5~10年延びる可能性もあるという。一方、犬についても、寿命を大幅に延ばす画期的な治療法が発見されている。
2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大学特別栄誉教授の大村智博士が1979年に開発した寄生虫駆除薬「イベルメクチン」は、今でも、アフリカだけで年間数万人を失明から救っている、代表的な寄生虫予防薬だ。同薬は、当時、心臓病や肝臓病などを引き起こすとされ、犬の死因の30%を占めていた「フィラリア症」の予防にも絶大な効果を示し、犬の寿命を10年延ばしたとされる。動物評論家の三上昇氏がいう。
「ペット医療の発展で、犬や猫の寿命はここ30年で2倍に延びました。寿命が延びたことで、ペットも人間と同じようにがんや心筋梗塞、動脈硬化などの病気を患うようになった」
現在、犬の死因は1位ががん、2位が心臓病、3位が腎不全、猫は1位ががん、2位が腎不全、3位が猫伝染性腹膜炎だ(日本アニマル倶楽部調べ)。ペットもフィラリア症などの病気で死ななくなったことで、人間と同様、死因の第1位にがんが躍り出ている。
神奈川県藤沢市にある日本大学動物病院は、43人の獣医師を含むスタッフ55人体制で医療体制を整える国内有数規模の動物病院だ。がんに関しては、手術や抗がん剤だけでなく、全国でも数少ない放射線治療を受けられる施設である。
同院長で日大生物資源科学部教授の中山智宏氏は放射線治療についてこういう。
「動物向けの放射線治療を行なえる動物病院はまだ少なく、本学を含めて全国に10施設ほどしかありません。放射線治療の特徴は、人間の場合と同じで、脳や体内の奥などにあって直接メスで切除するのが難しい腫瘍を小さくするのに使います。
動物の場合、腫瘍を特定する事前の検査でも全身麻酔をかける必要があります。当院では昨年、非常に高速に撮影できる新型CTを導入して全身麻酔なしで腫瘍の位置を特定できるようになりました」
神奈川県川崎市にある日本動物高度医療センターは、人間のがん治療でも注目を浴びつつある最新治療法を導入している。
「当院では手術、抗がん剤、放射線療法にプラスして『がん免疫療法』を実施しています。がん免疫療法とは、体の中から取り出した免疫細胞に刺激を与え、活性化させたものを体内に戻すことで、がんを撃退する力を高める方法。他の治療に比べて副作用が少ないのがメリットです」(同センター・吉川昌克獣医)
※週刊ポスト2016年12月23日号