11月以降、株式市場はトランプ相場の活況に沸いているが、2016年の相場を振り返ると、必ずしも多くの投資家が利益を出した年ではなかったのではないか。今の株式市場を取り巻く環境と今後の相場見通しについて、カブ知恵代表・藤井英敏氏が解説する。
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2016年の前半は個人投資家にとって災難続きだった。日経平均株価は前年12月の2万円台をピークに年初から続落。2月には一時1万5000円を割り込み、4月に1万7600円台まで回復したものの、6月にはブレグジット(英国のEU離脱)決定によって再び1万5000円割れとなった。11月からのトランプ相場でようやく株価が回復したが、そこまでに大きなダメージを負った個人投資家は少なくないだろう。
とりわけ多くの個人投資家が参戦する東証マザーズ指数は、4月に9年3か月ぶりの高値をつけたものの、ブレグジット・ショックで叩き落とされ、1日の売買代金は4月の半分以下となる1000億円を下回る水準まで落ち込んだ。実際、私の周囲でも「年初の1億円が夏には2000万円まで激減」、「1000万円が300万円になった」と嘆く投資家もザラにいる。
信用取引で全力買いをしていた個人投資家はほぼ壊滅状態となり、まさに信用収縮が起こったのだ。だが、見方を変えれば、もう信用買いに伴う売り物は出ないほどの“焼け野原”と化したため、ここからの大きな下げは考えにくい。むしろ需給は改善しつつあるといえるだろう。
株価の底入れには急落後に急回復を見せる「V字型」と、長らくもみ合う「鍋底型」があるが、マザーズ指数の場合は典型的な鍋底型となっている。そう考えていくと、マザーズなど新興市場を中心とした小型株はちょっと火がつけば燃え広がるような状況にあり、一気に株価が上昇する可能性は十分あると見ている。
◆日銀が買い支える「官製相場」は続く
何より日本株は日銀が年間6兆円ものペースでETF(上場投資信託)を買い入れ、株価を下支えしていることが大きい。中央銀行という巨大な買い手が支える「官製相場」は、少なくとも2%のインフレ目標に向けてまだまだ続く見込みのため、2017年も下がりにくい環境にあるのは間違いない。
ただし、下がりにくくなる反面、適正価格(フェアバリュー)を超えて株価が上がってくるようなケースは想定しにくい。そこを抜けてさらに上値を追うためには円安、そして原油価格が上がるか、高止まりして落ち着くかという材料が必要となるだろう。
為替動向を見ると、トランプ政権下でも米国の利上げは既定路線といえ、いずれドル高となる方向性はもう見えている。円安に資源高が加われば、日本株にとってメリットになるに違いない。