快進撃が止まらない。米男子ゴルフ慈善大会ヒーロー・ワールドチャレンジで、松山英樹(24)が通算18アンダーで優勝。同大会はツアー非公式ながら、世界ランキングの上位者で争われる大会だ。この優勝で、個人戦は直近5試合で4勝(2位が一度)。およそ2か月で稼いだ賞金は約4億6000万円にのぼる。
大会終了後、松山は来年の目標を「4月のマスターズで勝つこと」とコメントしたが、もはや夢物語と感じる人はいないだろう。驚異の活躍について東北福祉大学ゴルフ部で松山を指導した阿部靖彦監督はこう語る。
「今年のマスターズ以降、英樹はよくなかった。立ち直るきっかけになったのは、7月の全米プロだと思います。そこから少しずつ心技体が充実していき、10月の日本オープンでワンステップ上がった。その後の5試合で4勝なんてそうそうできるものではありません。英樹も相当な手応えを感じていると思いますよ」
その松山、2014年に東北福祉大を卒業後も拠点を仙台に置いてきた。実は住民票も仙台に置いたまま。つまり莫大な額の獲得賞金からの住民税は、東京でも、出身地・愛媛でもなく、東北の地に納められるかたちになっているのだ。阿部監督が説明する。
「英樹は卒業式後の会見で“(東日本大震災で)被災した人たちを勇気づけたい”と話したが、その気持ちは今も変わっていない。プロ野球・楽天の本拠地・コボスタ宮城の年間指定席に被災者の子供たちを招待するなどの活動を続けています。
米ツアーでの獲得賞金は米国で納税することになりますが、日本で稼いだ賞金にかかる税金は宮城県や仙台市にいくようにしている。米ツアーの合間をぬって日本の試合に出るのには、そうした理由もあるんです」
直近の「5戦4勝」のうち、日本で戦ったのは2試合。「日本オープン」と「三井住友VISA太平洋マスターズ」で、両方優勝している。賞金は各4000万円の計8000万円。住民税10%で単純計算して800万円を納税することになる。
変に目立つ寄付より“黙って納税”が最大の社会貢献──それが世界一を狙う男のポリシーか。
※週刊ポスト2016年12月23日号