《肩の痛みや肩こりなどは、例えば動物霊などがエネルギーを搾取するために憑いた場合など、霊的なトラブルを抱えた方に起こりやすい》。あるネット記事の一節だ。それが占いサイトや超常現象サイトなら別に驚くことはないが、東証一部上場のIT企業DeNAが運営する医療情報サイト「WELQ」の記事だから火の手が上がった。
ネットユーザーたちがさらに探すと、およそ医療とはかけ離れた迷信レベルの記事や、与太話が続々と見つかった。
「『L』という成分を含んだヨーグルトはインフルエンザやがん、ノロウイルスや放射能保護に効果がある」
「牛丼チェーンストア最大手で牛丼を食べるとアナフィラキシーショックが起こる」
「ダブル不倫に向いているのは、“不倫をしても精神的に病まない人”だ」
そのようにインチキ極まりない内容の記事(薬機法違反などが疑われる)や、他のネットサイトのコピペ記事(著作権法違反などが疑われる)があまりにも多かったので、DeNAは今月7日までに「WELQ」を含む10サイトを閉鎖。南場智子会長(54才)ら経営陣が謝罪会見を開き、深々と頭を下げた。
なぜこんなデタラメなことがまかり通ってきたのか。ある医療情報サイトの元編集長が語る。
「ネットサイトも慈善事業でやっているわけではありません。“1クリックいくら”という広告ビジネスで、経営者からは“とにかくコストをかけずにたくさん記事を配信してビュー数を稼げ”と要求されます。海外の医療情報サイトでは、医師や研究者などプロの医療関係者が監修するなどして内容をチェックする体制があります。ただし、そうすると1本の記事を作るのにコストがかかりすぎる。手っ取り早く稼ぐために、監修者を置かず、他のサイトを丸パクリし、記事をまとめるライターにもギャラは1本1000円ぐらいしか払わないということが横行してるんです」
そのようにして、もはや匿名のネット掲示板の内容と大差ない記事ができあがる。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏はこう指摘する。
「IT企業はコンテンツ(記事)に“愛”がないんです。真実を書こうとか、噂を流さないようにしようとか、取材先に敬意を払うとか。もし間違った内容を書いても、記事を削除すればいいぐらいにしか考えずに、十数年もやってきた。
ネットメディアが乱立してきたので、編集の訓練をされている“プロの編集者”がそもそも少ない。著作権も肖像権も差別用語も薬機法も知らないまま、サイトの責任者をやっている人も多いんです」
DeNAがサイトを閉鎖した後、他のIT企業が運営している同じようなサイトでも同じようなトンデモ記事が見つかり、こっそりと次々に削除されている。ネット拝金主義の“バカの壁”は高い。
「デマサイトに騙されて健康を害さないようにするためには、医療機関や大学など、運営者が明確なサイトだけを信用するしかありません」(前出・中川氏)
※女性セブン2017年1月1日号