米国に挑戦状を叩きつけ、中国への接近を仄めかしたかと思えば、周囲が火消しに奔走。国内では麻薬撲滅を強行し、国民から喝采を受ける。フィリピンの盟主がここまで注目を浴びたことはあっただろうか。ノンフィクションライターの水谷竹秀氏が、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領(71)、その原点の地を歩く。
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緑一色に染まった二階建ての質素な民家の前で、フィリピン人たちが右拳を突き上げ、ドゥテルテ大統領お得意のポーズで写真に収まっている。撮影が終わると近くの露店に並ぶキーホルダーやステッカーなどのドゥテルテグッズ(20ペソ=約40円から)を購入し、帰っていく。しばらくするとまた別の一団がぞろぞろと歩いてくる。その光景はまるで観光地さながらだ。
ここはマニラから飛行機で南に約一時間半、ミンダナオ地方ダバオ市の住宅街にあるドゥテルテ大統領の自宅である。私が訪れた11月半ばのある週末、大統領は公務のためか不在だった。周辺に詰めている警備員の男性はこう説明する。
「フィリピンの全国各地から毎日このように観光客200~700人ぐらいが訪れます。以前は24時間見学可能でしたが、安全上の理由から最近は午後5時までと時間制限を設けました」
見学希望者は、大統領邸近くの検問所で、ノートに名前や住所などの必要事項を記入し、身分証明書(ID)を渡せば原則、誰でも可能だ。マニラから訪れた、ツアーガイドのフィリピン人女性(40)はこう語った。
「大統領のルーツを探るために来ました。この家のシンプルさは大統領の人柄を反映しているかのようね。政権発足からまだ間もないため、審判を下すのは時期尚早だけど、徐々にこの国が良くなっていくと信じている」