愛媛県の愛媛銀行と伊予銀行が始めた「高齢者のATM振り込み制限」システム(愛媛銀行は今年7月から、伊予銀行は11月21日から開始)が物議を醸している。
愛媛銀行では70歳以上、伊予銀行では75歳以上の高齢者を対象に、過去1年以内にATMから振り込みをしていないと、一定額以上(非公開)を振り込もうとしたときに自動的に制限がかかる。どちらも愛媛県警と連携した取り組みで、対象の高齢者は銀行の窓口でなければ振り込みができない。
高齢者を狙った“振り込め詐欺”などを防ぐ狙いというが、年齢で一律に制限をかけるこのシステムに猛然と反対の声を上げるのは、目黒区議で芸能リポーターの須藤甚一郎氏(77)だ。
「これじゃあ70歳過ぎた老人はみんなボケてまともな判断ができないといってるようなものだろ。余計なお世話だよ。70歳以上だって多くの人がボケていないし、まとまった金額を振り込むことだってあるんだから。そういう人にとっては窓口で長々と待たされて本当に困る。全国すべての金融機関がやり始めたら、たまったもんじゃない」
一方、取り組みを進める愛媛県警はこのシステムの必要性をこう説明する。
「今年11月末までに県内で起きた特殊詐欺の件数を見ると、被害の76%が65歳以上の高齢者です。制限を設けたことで被害が止められた例もあると聞いています」(生活安全企画課)
愛媛銀行に聞くと、こう答えた。
「当行はふるさと銀行として、『お客様の財産を守らなければならない』『一人でも振込詐欺被害に遭わないように銀行のできる最善を尽くす』、その思いで、愛媛県警と連携し、対策をとってまいりました」
もちろん、オレオレ詐欺が反社会勢力の大きな資金源である以上、対策は急務だ。しかし、犯行グループの摘発が追いつかないからといって“年寄りの利便性は二の次。一律に制限してしまえ”という乱暴なやり方でいいのか。「これは“小さな親切、大きなお世話”の典型」(須藤氏)という声が出るのも無理はない。
※週刊ポスト2016年12月23日号