早朝から病院の待合室に列を作り、薬をもらい帰宅する頃には昼が過ぎている──。慢性疾患で“いつもの薬”をもらうことが目的となっている人たちは、そうした手間や時間を煩わしいと感じながら、「ルールだからしょうがない」と諦めているのではないか。
それにしてもなぜこうした仕組みになっているのだろうか。米山医院院長の米山公啓氏が解説する。
「日本は医師の権限が非常に強い。欧米では患者が望めば薬剤師の判断でジェネリック医薬品への変更ができますが、日本では医師の許可を得ないとできません。同じ薬をもらうために頻繁に受診することに疑問を感じる医療関係者もいますが、薬の処方に関しては医師が独占的に裁量権を握っているため、変えるのは容易ではないのです」
医療ガバナンス研究所・理事長の上昌広氏もこんな指摘をする。
「日本は諸外国に比べ、処方箋がないと出してもらえない薬が圧倒的に多い。その処方箋には医師側の都合が反映され、患者の利便性は無視されています」
「薬の処方期間」も、実は医師側の都合で決められたものだという。日本在宅薬学会理事長で医師の狭間研至氏が話す。
「販売されて1年以内の新薬は14日分まで、睡眠薬や向精神薬などオーバードーズ(過剰摂取)の危険性がある薬は30日分までと、厚労省によって処方期間が決められています。しかし、その他の多くの薬は処方期間に制限はありません。
長期にわたって飲み続ける人が多い高血圧薬や糖尿病薬などは期間の上限なく処方できる。もちろん症状の変化や副作用などに対応するため定期的な診断は受けたほうがいいですが、病状の安定した人なら、60日分や90日分を一度に出しても問題ないケースが少なからずあるのも事実です」
ところが現実は2週間や1か月分しか処方せず、頻繁に通院を促されるケースが大半だ。仮に2か月に1回の受診だと年6回の通院だが、2週間に1回だと年24回も通院することになる。病院側の実入りは4倍に膨らむ。
「病院側が期間を小刻みに区切って薬を処方する理由は、強制的にリピーターを大量生産することで再診料などを確実に稼ぐためです」(前出・上氏)
薬の処方方法も期間も患者目線に立ったものではない、ということなのだ。
※週刊ポスト2016年12月23日号