京都には、芸術家たちのセンスが光る小さな美術館がたくさんある。美術ライターの浦島茂世さんは、その魅力を語る。
「多くの芸術家や作家が暮らした京都。この街を愛した芸術家の生活や作品を身近に感じられる小さな記念館や、個人のコレクションを展示している美術館が多いんです」(浦島さん)
京都に200館以上ある美術館の中でも特におすすめなのが、芸術家の“暮らし”が垣間見える場所。京都に長年暮らした芸術家の自宅やアトリエ、日本画家が自ら設計した庭園など、当時の暮らしの中に息づくアートを感じられるという。
河井寛次郎記念館の学芸員で孫娘の鷺珠江さんは、こう話す。「“暮らしが仕事、仕事が暮らし”という、祖父の残した言葉通り、いつも我が家は作品であふれ絶えず人が訪れていました」(鷺さん)。
木の温もりを感じる母屋は、そこかしこに蒐集品や彫刻があり、食卓や居間、書斎、防空壕も当時のまま。中庭の先には、巨大な登り窯が静かに鎮座している。寛次郎の暮らした部屋と作品をしみじみ眺めながら、ゆったりとした時を過ごすのもいい。
茶室や庭園を併設している場所が多いのも小さな美術館ならでは。「大きな美術館の企画展は行列することが多いですが、国宝級の作品や注目の作家を、混雑なく眺められるのも魅力です」(浦島さん)。
※女性セブン2017年1月1日号