投資信託市場では海外リート(不動産投資信託)を投資対象とするファンドへの資金流入が減少する一方堅調に資金が積み上がってファンドがある。投信市場の最新動向を楽天証券経済研究所ファンドアナリストの篠田尚子氏が解説する。
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国内投資信託市場への資金流入が続いている。マーケットへの流入額から流出額を差し引いた純流入額をみると、2016年10月は243億円となり、これで14年12月から数えて23か月間、ほぼ2年間にわたって純流入額のプラスが続いていることになる。
ただし、純資産残高は、10月までの日米の株式市場の株価が伸び悩んでいることが影響し、60兆円を前にして足踏み状態となっている。
資金の流入先には変化が生じている。これまで純資産残高の上位を占め、毎月高水準の資金流入が続いていた海外リート(不動産投資信託)に投資するファンドへの流入が減少してきているのだ。海外リートに投資するファンドは、分配金が毎月支払われる毎月分配型がほとんどで、その分配金の引き下げが相次いでいることが大きな要因。2016年に入って以降、すでに20本程度で分配金の引き下げが行なわれている。
さらに、1兆4313億円で純資産残高トップとなっている『フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)』が、11月にこれまでの月100円の分配金を70円にすると発表。今後、資金流出が加速する可能性が浮上している。
海外リートファンドの純資産残高は10兆円に達しており、そのほとんどが米国のリート市場で運用されている。米国のリート市場は、マーケットサイズを考えると、こうしたファンドの資金でバブルに近い様相を呈しているため、資金流入が減っていることはソフトランディングに向けた動きともいえるが、今後の動きには注意が必要だろう。
一方、堅調に残高を積み上げているファンドもある。それは、「リスクコントロール型」と呼ばれるものだ。価格変動リスクを低減させるために、市場動向に応じて投資資産の組入比率を機動的に変更するファンドのことで、簡単にいうと、運用資産を「減らさない」ことに主眼を置いている。
以前から、同様のファンドは存在していたものの、リスクコントロール型と銘打って登場したのは2012年後半から。2014年から始まる『NISA』(少額投資非課税制度)をにらんで、相次いで設定された。当時、NISAは、資産運用の経験がない人も利用することが期待され(実際その期待は実現した)、そうした人たちに向けて、なるべくリスクを排除し、運用による損失が生じにくいファンドを提供することを目的としていた。
しかし、販売当初は苦戦が続いた。商品内容や運用の目的が個人投資家にわかりにくく、しかも、2013年はアベノミクスがスタートした年で株式市場が絶好調だったからだ。3~5%程度の収益を狙うリスクコントロール型は、しだいに影が薄くなっていった、という経緯がある。
それがこのところ再び注目されているのは、運用が始まって約3年以上経ち、トラックレコード(運用実績)が整ってきたと同時に、その間、ファンドが目指すところの、安定的な収益を継続して生み出してきたからだ。加えて、アベノミクスがひと段落し、株式市場が伸び悩んでいることや、マイナス金利が常態化しつつある金融市場において、リスクコントロール型が生む収益の価値が相対的に上がっている、という背景もあろう。