高齢化時代、最後に残された人生のパートナーはペットだったという高齢者は少なくない。
「90歳で亡くなった父。母に先立たれ、ひとりになったところを、飼い続けていた柴犬が母の代わりとして寄り添っていました。昨年12月に父は亡くなってしまいましたが、最期までペットが生きがいだったと思います」(62歳男性)
一般社団法人ペットフード協会の調査によると、犬を連れて散歩すると、男性で0.44歳、女性では2.79歳、健康寿命が延びるとの結果が出たという。
「犬や猫を飼うことで、世話をしたり、散歩に出たりすることになるので、認知症の予防になるという報告もある。つまり、ペットの存在はそれだけ高齢者の生活に“ハリ”を与えてくれるのです」(動物評論家・三上昇氏)
しかし、飼い主もペットも高齢化してくると、さまざまな問題が起きてくる。まず、飼い主が先に亡くなってしまった場合、ペットの行き場がなくなる。引き取る家族や親戚がいなければ、最悪、殺処分されるケースもある。81歳女性が不安を吐露する。
「既に夫には先立たれており、息子も娘も独り立ちした。それでも愛猫がいるから寂しくはなかったのですが、昨年、愛猫が亡くなって本当のひとりぼっちになると、急に寂しさが押し寄せてきた。
でも、これから新しい猫を飼っても、先にあの世にいくのは、おそらく私。その後のことを考えると踏み切れない。もうペットは飼えないかもしれません」
高齢化の問題は人間だけではない。ペットが高齢化して、飼い主の手に負えなくなることもあるという。あおき動物病院の青木大院長が、ペットの高齢化事情をこう明かす。
「寿命が延びたことにより、最近は犬や猫も認知症になる割合が増えてきました。同じ場所をくるくる回ったり、頭を壁にもたれかけて突っ立っていたり、夜中に単調に鳴いたり。特に犬は鳴き声が近所迷惑になるので『安楽死させたい』と悲痛な相談をしてくる飼い主もいます」
事情を聞いたうえで、症状を改善する努力をし、それでダメなら「安楽死」が選択肢になることもある。お互い健康な間はいいが、どちらかが老いて病気になったときの問題は切実だ。
※週刊ポスト2016年12月23日号