今年の年末は、マイナンバーの届出書類に振り回されているとこぼす人が増えている。経営コンサルタントの大前研一氏が、マイナンバー制度導入と同時に、政府が鳴り物入りで始めた「マイナンバーカード」について論じる。
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マイナンバー制度がスタートして1年余が過ぎた。しかし、莫大な予算を投じて導入されたこの制度のことを、今では大半の国民が忘れてしまっているのではないだろうか。
実際、総務省によると、マイナンバーカードの申請件数は10月3日時点で1143万5735件(うち850万8074件はカードを交付済み)にとどまっている。日本の人口に対する申請率は1割に満たないという惨憺たる状況だ。
私自身は申請して入手したが、今のところ全く使い道がない。マイナンバーカードを使ってコンビニのマルチコピー機から印鑑登録証明書や住民票の写しなどが取得できる市区町村は283(11月1日現在)で全市区町村の16%にすぎず、私が住んでいる千代田区もまだサービスが始まっていないのだ。
この問題に関連して言えば、私は20年以上前から納税、年金、健康保険証、運転免許証、パスポートなどの国民情報を一元管理する「国民データベース」の構築を提唱している。その観点から、かつての住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)と、それを引き継いだマイナンバー制度がいかに時代遅れかということを批判し続けてきた。
マイナンバーカードに健康保険証、運転免許証、クレジットカード、キャッシュカードなどの機能を持たせることやスマホと組み合わせることも検討されているようだが、それらは最初からやっておくべきであり、今から付け加えたらコストが嵩んでいくだけである。