テクノロジーの進化が未成年の犯罪をひときわ複雑にしている。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
* * *
中国ではこのところ学内外でのいじめや暴力事件を含めた未成年の犯罪が深刻な社会問題となってきている。
2016年11月24日に『京華時報』が報じた記事のタイトルは、〈中3の女子が30人の学生に囲まれ次々にビンタをされる そのうちの一人が「ヤクザとは何かを教えてやる」と叫ぶ〉という恐ろしいものであった。
この事件は2015年4月18日、中国の動画サイトに投稿されたことで全国的なニュースになっていた。今回、あらためてメディアが報じたのは、23日に北京市海淀区の裁判所が事件にかかわった30人のうち3人の加害者に、それぞれ6カ月から8カ月の懲役を言い渡したからである。
動画が公開された当初、中3女子を囲んだなかには男子生徒もいたが、次々に平手打ちをしたのが女子生徒であったことから大きな話題となった。
トラブルの原因も、被害者が写真を撮っていたなかに、たまたま加害者が写り込んでしまったことだというから恐ろしい。被害者はすぐに謝罪し写真の削除を申し出たというが、それでは許されず、暴行事件へと発展してしまったという。
同じく2016年12月4日、逃亡していた未成年の指名手配犯が上海市の公安局に逮捕された。この人物は、2015年11月24日の夜、浙江省金華市の義烏で別のグループと乱闘になり相手に重傷を負わせていた。
乱闘は、双方のグルーブのリーダー格の男が一人の女性を取り合ったことから起きたとされているが、このとき義烏の公園で乱闘となったとき、この雲南省から来た未成年の労働者は、「未成年は人を殺しても罪にはならない」と叫んで刃物を振り回したと報じられている。
「中国ではここ数年、いじめの動画を、加害者が喜んで動画サイトに投稿する傾向が見られ問題視されていたが、こうした問題はいま、さらに深刻化しているといって間違いないでしょう」(北京の夕刊紙記者)