トランプ氏の米大統領選当選後、米国の株式市場は連日のように過去最高値を更新したが、今後はどのようなシナリオが予想されるのか。海外金融機関の動向について詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズ代表取締役の宮島秀直氏が解説する。
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今後のポイントとなってくるのは、トランプ新大統領による就任演説だ。演説は1月20日の予定で、この演説を契機に、政策の全体像が確認できるようになる、というのがコンセンサスとなっている。
ただし、海外投資家の見方は微妙だ。そもそもの政策リスクが顕在化する可能性があるからだ。選挙活動を通じて主張してきた、NAFTA(北米自由貿易協定)の見通しや不法移民の排除など数々の保護主義的な政策だけを考えても、現実化すれば社会の混乱は必至。あるいは、これまでの主張を翻して無難な政策に転じたとしても混乱は避けられない、という見方だ。
世界最大のシンクタンクである、米国ブルッキングス研究所の米国政策を担当するトップアナリストは、私のインタビューに対して、「一部の楽観派は、トランプ氏は大統領として穏健な選択をすると考えているが、仮にそうなれば、これまで熱狂的にトランプ氏を支持してきた、有権者の30%以上を占める白人ブルーカラー層が暴動を起こし、社会秩序が深刻に揺らぐ可能性を考える必要がある」と答えている。
ブルッキングス研究所は、選挙前に最もトランプ大統領の可能性を高く予測していたシンクタンクのひとつである。また、前述の見方は、民主党系のブルッキングスだけでなく、共和党系のカーネギー研究所や戦略国際問題研究所といったシンクタンクにも散見され、投資家に共有されつつある。
たしかに、経済政策では、法人・個人の減税や、金融機関を規制する『ドッド=フランク法』の撤廃など、ポジティブな政策があるが、多くのシンクタンクが想定しているトランプ・リスクは外交政策である。外交政策によって経済がガタガタになるというシナリオだ。このシナリオは、トランプ政権が発足して以降、常に念頭に置いておくべきだろう。