現在、降圧剤(高血圧治療薬)の“主流”とされるのが「ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)」だ。一番の売れ筋で、医薬品全体の売り上げランキングでも上位を占める。
しかし、『週刊現代』はそのARBの薬である「ブロプレス」、「オルメテック」、「ミカルディス」などを軒並み「飲み続けてはいけない薬」と紹介し、以下のように説明していた。
〈わずかに寿命を延ばすほど効果があると認められるのは、サイアザイド系利尿剤という古いタイプの降圧剤だけ〉
〈ARBなど最新の降圧剤は薬価が高いだけで、古くからある薬より寿命を延ばす効果も少ない〉(『週刊現代』6月11日号)
果たして本当にそうなのか。ならば、なぜ売れているのか──。獨協医科大学循環器・腎臓内科主任教授の石光俊彦医師がいう。
「製薬会社としては高価な薬を売るほうが、売り上げが上がるので、『週刊現代』の言うように、高い薬を売り込もうとする面はあるかもしれません」
ただし、「それだけが売れている理由ではない」と石光医師は続ける。前述の〈古くからある薬より寿命を延ばす効果も少ない〉という言及は誤解を誘うものだという。
「利尿剤が〈寿命を延ばすほど効果があると認められた〉とする調査は、薬を飲んだ人と飲んでいない人の死亡率を比較した古いデータです。ARBが登場した1990年代後半には、すでに臨床試験のために『高血圧患者に薬を飲ませない』ということは倫理的に許容されなくなっており、同条件での試験が行なわれていない。
そのことによってARBについて効果がないとは言えません。ARBは降圧剤の中でも比較的効果が高い。ですがこの表現だと、ARBは利尿剤より劣っていると思ってしまいます」(同前)
またARBには、利尿剤と比べて「メリット」があると石光医師は続ける。