現在、降圧剤(高血圧治療薬)の“主流”とされるのが「ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)」だ。一番の売れ筋で、医薬品全体の売り上げランキングでも上位を占める。
しかし、『週刊現代』はそのARBの薬である「ブロプレス」、「オルメテック」、「ミカルディス」などを軒並み「飲み続けてはいけない薬」と紹介し、以下のように説明していた。
〈わずかに寿命を延ばすほど効果があると認められるのは、サイアザイド系利尿剤という古いタイプの降圧剤だけ〉
〈ARBなど最新の降圧剤は薬価が高いだけで、古くからある薬より寿命を延ばす効果も少ない〉(『週刊現代』6月11日号)
果たして本当にそうなのか──。獨協医科大学循環器・腎臓内科主任教授の石光俊彦医師は、「ARBは若年から中年の人にはよく効くが、70代以上の人には効きにくい傾向がある」という。そして、この薬は逆に効きすぎて危ないことがある。
「体内の水分が減っている時に服用すると、血圧が下がりすぎることがある。特に夏場は注意が必要です。それでも若い人であれば、それほど血圧は変わりません。しかし高齢者の場合、動脈硬化などで血管が固くなっているため、ガクンと血圧が下がってしまうことがある」(同前)
そのため実態として、ARBは必ずしも“主流”とはいえない。
「欧州では、高齢者に対して、『カルシウム拮抗薬』を第一選択肢として使うことがスタンダードです。カルシウム拮抗薬は血管を拡張させることで血液を流れやすくし、血圧を下げる。ホルモンの作用に影響されるARBと違って、年齢に関係なく効果を発揮します。
もちろん、なかにはカルシウム拮抗薬で十分に血圧が下がらない人もいるので、その場合に併用剤としてARBや利尿剤を追加することが多いというのが実態です。日本でも、価格が高いので売上高ではARBが上位に来ていますが、処方の数ではカルシウム拮抗薬のほうがARBより多いはずです」(同前)
『その「1錠」が脳をダメにする』(SBクリエイティブ)の著者で薬剤師の宇田川久美子氏が指摘する。
「全ての降圧剤にいえることではありますが、降圧剤の使用は血圧の高い症状を一時的に緩和するための『対症療法』にすぎません。
大事なのは、一時的に服用をやめてみるなどして、血圧の変化を自分で確かめてみること。その結果、やめても安定しているようであれば無理に飲み続ける必要はありません。ただし、決して一足飛びに行なってはいけないということです」
ただ漫然と飲むのではなく、自分の身体と日々向き合って「飲み続けるべきか」を問い続ける必要がある。
※週刊ポスト2017年1月1・6日号