国際情報

中国の「慰安婦」歴史博物館 強制性についての説得力は弱い

中国”慰安婦”歴史博物館の館内

 10月22日、上海に慰安婦像が設置された。中韓の芸術家らが寄贈したものだ。同日、「中国“慰安婦”歴史博物館」も開館した。慰安婦問題を終わらせない“中韓共闘”の現場をジャーナリストの西谷格氏が訪れた。上海師範大学のキャンパスの芝生の上にチマチョゴリを来たおかっぱアタマの少女と漢服に身を包んだ少女が二人、姉妹のように並んで椅子に腰掛け、険しい表情でまっすぐ前を見つめていた。そのすぐ近くの建物2階に博物館はあり、無数の元慰安婦とされる人々の顔写真が散りばめられ、遺品が展示されていた。

 * * *
 物品の展示は、当時のものは「突撃一番」と書かれたコンドームの袋や日本酒の酒ビン、黒く変色した固形の消毒薬などがいくつかあるだけで、大半は元慰安婦とされる人たちが晩年使っていた日用品ばかり。古びたサンダルやヘアブラシ、入れ歯、カレンダー、パスポート、身分証、裁判書類などだ。プラスチック製のヘアブラシや掛け時計などがガラスケースに仰々しく展示してあるのは、ちょっと拍子抜けする。彼女たちがこの世に生きた証しではあるものの、「日本政府に強制されて慰安婦になった」と裏付けるものではない。

 展示全体を通して「慰安婦や慰安所が存在した」という証言や写真はふんだんにあるものの、争点となっている「強制性」についての説得力は弱い。ないといってもいいくらいだ。

 モヤモヤした気持ちのまま進んでいくと、多くの来場者が立ち止まって熱心に読んでいるパネルがあった。中国人の“証言”をもとにしたむごたらしい暴力描写のコーナーだ。

「日本兵は銃剣を突きつけて、有無を言わさず私たちを慰安所に連れ込んだのです」

「日本人は私の頭をつかんで壁に死ぬほどぶつけて、鮮血が流れた。腹のなかの子供も流産した」

「これもすべて日本鬼子のせいだ! あいつらははした金で私たちの口を塞ごうとしている。そんな金は欲しくない」

「日本軍が村を攻略すると、彼女は身を隠すことができず、捕獲された。日本軍は昼間は彼女を木に吊り上げて殴打し、夜は洞窟に閉じ込めて野蛮な輪姦を行った」

「突然日本兵がやってきて、みんなあちこちに身を隠しました。私も室内に隠れたのですが、日本兵に捕まってしまいました」

「法廷では、昭和天皇と日本政府の有罪を求めたい!」

 アフリカの奴隷狩りのようなことが行われていたというのである。証言を羅列しただけで、物的証拠は提示されていない。その次には、案の定というべきか、今度は日本政府がろくに謝罪をしていないという説明パネルが続く。

「日本軍によって強制されていたという”慰安婦”の歴史的事実を、安倍晋三首相は公式に否定した」

「日本政府は“慰安婦”問題に対する立場や態度が常に曖昧で、今なお罪を十分に認めていない」

 展示の最終部「調査、現状と関心及び愛」では、中国の研究者たちが元慰安婦たちに物心両面で援助の手を差し伸べている旨が記されていた。我々は正義の味方です、と言わんばかりだ。

※SAPIO2017年1月号

関連記事

トピックス

不倫を報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁との手繋ぎツーショットが話題》田中圭の「酒癖」に心配の声、二日酔いで現場入り…会員制バーで芸能人とディープキス騒動の過去
NEWSポストセブン
父親として愛する家族のために奮闘した大谷翔平(写真/Getty Images)
【出産休暇「わずか2日」のメジャー流計画出産】大谷翔平、育児や産後の生活は“義母頼み”となるジレンマ 長女の足の写真公開に「彼は変わった」と驚きの声
女性セブン
春の園遊会に参加された愛子さま(2025年4月、東京・港区。撮影/JMPA)
《春の園遊会で初着物》愛子さま、母・雅子さまの園遊会デビュー時を思わせる水色の着物姿で可憐な着こなしを披露
NEWSポストセブン
田中圭と15歳年下の永野芽郁が“手つなぎ&お泊まり”報道がSNSで大きな話題に
《不倫報道・2人の距離感》永野芽郁、田中圭は「寝癖がヒドい」…語っていた意味深長な“毎朝のやりとり” 初共演時の親密さに再び注目集まる
NEWSポストセブン
春の園遊会に参加された天皇皇后両陛下(2025年4月、東京・港区。撮影/JMPA)
《春の園遊会ファッション》皇后雅子さま、選択率高めのイエロー系の着物をワントーンで着こなし落ち着いた雰囲気に 
NEWSポストセブン
週刊ポストに初登場した古畑奈和
【インタビュー】朝ドラ女優・古畑奈和が魅せた“大人すぎるグラビア”の舞台裏「きゅうりは生でいっちゃいます」
NEWSポストセブン
現在はアメリカで生活する元皇族の小室眞子さん(時事通信フォト)
《ゆったりすぎコートで話題》小室眞子さんに「マタニティコーデ?」との声 アメリカでの出産事情と“かかるお金”、そして“産後ケア”は…
NEWSポストセブン
逮捕された元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告(過去の公式サイトより)
「同僚に薬物混入」で逮捕・起訴された琉球放送の元女性アナウンサー、公式ブログで綴っていた“ポエム”の内容
週刊ポスト
まさに土俵際(写真/JMPA)
「退職報道」の裏で元・白鵬を悩ませる資金繰り難 タニマチは離れ、日本橋の一等地150坪も塩漬け状態で「固定資産税と金利を払い続けることに」
週刊ポスト
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン