年末の風物詩といえばNHK紅白歌合戦だ。67年の歴史を振り返ると、生放送なだけに様々なハプニングが起きている。
1982年(第33回)、視聴者から猛ブーイングを受けたのがサザンオールスターズ・桑田佳祐だ。司会の山川静夫アナが「三波春夫をイメージしたステージです」と紹介すると、桑田は白塗りに和服姿で登場。ヒット曲『チャコの海岸物語』を演歌調で歌い始めた。だが、間奏に入ると「とにかく、受信料は払いましょう!」「裏番組はビデオで観ましょう!」と大放言。
これにはNHKに「ふざけすぎ」と抗議が殺到。その後、NHKが桑田側に詫び状を要求し、これに怒った桑田が「詫び状を書くぐらいなら二度と出ない」とはねつけたとも報じられた。
「『さすが桑田!』というエピソードです。当時、フォーク系やロック系の間には“アンチ紅白”という空気があり、その中で普通に歌ったら“紅白の軍門に降った”といわれかねない。出演するからには、何か傷痕を残すというのが“桑田流”だったのでしょう」(音楽評論家・富澤一誠氏)
サザンは翌年にも出演したが、それを最後に紅白からはしばらく距離を置いた。だが、食道がんの手術の後、桑田が“復活の場”に選んだのは紅白(2010年)だった。それは桑田らしい“恩返し”だったのかもしれない。
※週刊ポスト2017年1月1・6日号