年末の風物詩といえばNHK紅白歌合戦にとどめを刺す。生放送だけに67年の歴史を振り返ると様々な事件が起きている。それは歌い手だけにとどまらない。
司会者が“やってしまった”ケースもある。司会者による最も有名な“事件”と言えば、1984年(第35回)の「ミソラ事件」だろう。
この年の紅白をもって引退を表明していた都はるみ。『夫婦坂』を歌い切ると、会場からは「アンコール」の大合唱が起きる。白組司会・鈴木健二アナの「1分間時間をください。私が説得してみます」の名アナウンスの後、紅白史上初のアンコールが披露された。
だが、都がアンコール曲『好きになった人』を熱唱した後、事件は起こった。総合司会の生方恵一アナが「もっともっとたくさんの拍手を“ミソ……”」と、「美空ひばり」と言い間違えたのだ。
瞬間視聴率80%を超える大舞台での言い間違いは波紋を広げ、生方アナは年明けに謝罪。その後、大阪支局へ異動となったことが「左遷」と報じられた。
生方アナは後に女性誌のインタビューで〈出演者もみんな涙していて、ステージ上はかつてない異常な熱気でした。これほど鬼気迫るシーンが戦後歌謡史のなかであっただろうか……あの美空ひばりでさえ……とふと脳裏をよぎったのがあの間違いの原因でしょうか〉と語っている。
※週刊ポスト2017年1月1・6日号