アクセルとブレーキの踏み間違いや高速道路の逆走。日本で珍しくない交通事故問題だが、ヨーロッパやアメリカで深刻な問題になっているとはあまり聞かない。“大人1人に1台”が当たり前のアメリカ、つい3年前まで免許証の更新制度がなかったドイツ。果たして実情は…。
「よく、ヨーロッパの人は運転がうまいといわれますが、ヘタな人は当然います。特にクリスマス休暇直前のこの時期は、あちこちで事故が起こっているのも事実です。ただ、日本のようにアクセルとブレーキを踏み間違えて起こる事故は、そんなに多くないんです」
そう語るのは、モータージャーナリストの岩貞るみこさん。世界のクルマと道路事情に通じ、イタリアで暮らした経験もある。
「その理由は、車両価格の安いマニュアル(MT)車の比率が高いから。特に販売台数の多いコンパクトカーは、10台中9台がMT車と言っても過言ではないですね」
MT車ではアクセルとブレーキの踏み間違えによる事故が起こりにくいのである。
「MT車にはクラッチペダルがあり、ブレーキを踏むときは必ず踏む。もしも間違えてアクセルペダルを踏んだとしても、クラッチペダルも踏んでいれば車は前に進まず、ただ、エンジンが空回りして大きな音がするだけ。また、前進と後退のシフトレバーを間違えて入れたとしても、そのままクラッチペダルを踏みこめば速度は緩やかになりますから、暴走する可能性は極めて低くなるんです」
日本でも「高齢ドライバーのためにマニュアル車復活を」という意見があったが、確かに的を射た解決策かもしれない。
とはいえ、ドイツでも高齢運転者の暴走事故などが問題になっており、クルマの安全性能を評価する団体は、歩行者検知付き被害軽減ブレーキが標準装備されていることを高評価の基準としている。
では、オートマチック(AT)車が多い北米はどうかというと、クルマ同士の衝突事故に比べて対人交通事故の比率は低いとはいえ、消費者情報誌「コンシューマー・リポート」によると、2014年には約1400万人が65才以上のドライバーが引き起こしたなんらかの交通事故に巻き込まれたという。
「2020年までに、北米では衝突被害軽減ブレーキを標準化することを定めています。ドライバーの高齢化とそれに伴う問題は世界共通。まずはクルマに何ができるか…が焦点のようです」
※女性セブン2017年1月5・12日号